
腰痛を改善する筋トレ方法をご紹介します。多くの人が悩まされる腰痛ですが、筆者も30代で腰痛に苦しんだ時期がありました。競技のために筋トレすればするほど悪化するという悪循環を立ちきり、現在は全く腰痛はありません。その方法とは「急がば回れ」の発想なのです。
その発想とは、腰の筋肉と対をなして作用する腹筋群(拮抗筋)および、腰の筋肉と一緒に動く共働筋を鍛えていき、周辺から腰を強くしていくというトレーニング方法です。
■腰痛の3つの原因
●内蔵疾患・腰椎変形・筋力低下

腰痛には大きく分けて3つの原因があり、それは、①内蔵疾患に起因するもの、②腰椎変形に起因するもの、③腰の筋肉の硬化や筋力低下に起因するものです。
①内蔵疾患に起因する腰痛の原因としては、慢性胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胆嚢炎、腹部大動脈瘤などがありますが、これは筋トレによって改善は不可能ですので、専門医の治療方針に従ってください。
②腰椎変形に起因する腰痛の原因としては、椎間板ヘルニア、脊柱狭窄症、脊柱すべり症、脊柱分離症、脊柱側湾症などがあります。こちらも専門医の治療が必要です。
③筋力低下や筋肉硬化に起因する腰痛は筋トレをして腰周りの筋肉を鍛えることで改善されるケースも少なからず見られます。
本記事では、③の対応として筆者も実際に効果があった筋トレについて解説していきます。
■腰の筋肉とその共働筋および拮抗筋
●長背筋群と上背筋基部・大腿屈筋群・腸腰筋群

腰痛改善の筋トレを始める前に、知っておく必要があるのが、腰を支える主たる筋肉・長背筋群、その共働筋となる上背筋基部・大腿屈筋群、これらの拮抗筋である腹筋群・腸腰筋群の構造と働きです。
●背骨を支える長背筋群

読みかた:せきちゅうきりつきん
英語名称:erector spinae muscle
部位詳細:腸肋筋|最長筋|棘筋
長背筋群=脊柱起立筋+多裂筋+回旋筋など
長背筋群は脊柱に沿って分布している筋肉の総称で、最長筋・脊柱起立筋・多裂筋をはじめとした数多くの筋肉から構成されており、脊柱の起立を維持するとともに体幹の伸展(背中を反らせる動き)に作用します。
●体幹伸展に連動する上背筋基部

読みかた:こうはいきん
英語名称:latissimus dorsi muscle
部位詳細:上部|下部
起始:下位第6胸椎~第5腰椎の棘突起・肩甲骨下角第9~12肋骨|正中仙骨稜・腸骨稜後方
停止:上腕骨小結節稜

読みかた:そうぼうきん
英語名称:trapezius muscle
部位詳細:上部|中部|下部
起始:後頭骨上項線・外後頭隆起・頚椎棘突起|第7頚椎・第1~3胸椎棘突起|第4~12胸椎棘突起
停止:肩甲棘・肩峰
体幹伸展時に、長背筋群とともに働くのが僧帽筋と広背筋からなる上背筋の基部です。
●大腿を体幹伸展と連動させる大腿屈筋群

読みかた:でんきんぐん
英語名称:gluteus muscles
部位詳細:大臀筋|中臀筋|小臀筋
起始:腸骨稜・腸骨翼|腸骨翼殿筋面・腸骨稜|腸骨翼
停止:大腿筋膜外側部・大腿骨粗面|大腿骨大転子尖端|大腿骨大転子前面

読みかた:はむすとりんぐす
英語名称:hamstrings
部位詳細:大腿二頭筋長頭|大腿二頭筋短頭|半膜様筋|半腱様筋
起始:坐骨結節|大腿骨粗線外側唇・外側筋間中隔|坐骨結節|坐骨結節内側面
停止:腓骨頭|腓骨頭|脛骨内側顆・斜膝窩靭帯|脛骨粗面内側
多くの場合、体幹の伸展には大腿部の屈曲(脚を後ろに上げる・曲げる動き)がともないます。この作用をになっているのが臀筋群(大臀筋・中臀筋・小臀筋)とハムストリングス(大腿二頭筋・半腱様筋・半膜様筋)です。
●背筋・大腿伸展に拮抗する腸腰筋群と腹筋群

読みかた:ちょうようきんぐん
英語名称:iliopsoas
部位詳細:腸骨筋|大腰筋|小腰筋
身体を反らせる動きに拮抗する筋肉群は胸筋群・腹筋群・大腿伸筋群など多くありますが、腰椎・骨盤の動きに深く関わっているのが腰椎および骨盤と大腿骨をつないでいる腸腰筋群(大腰筋・小腰筋・腸骨筋)です。
●体幹を屈曲および回旋させる作用

読みかた:ふっきんぐん
英語名称:abdominal muscles
部位詳細:腹直筋|外腹斜筋|内腹斜筋|腹横筋
起始:恥骨稜・恥骨結合・恥骨結節|第5~12肋骨外面|胸腰筋膜深葉・上前腸骨棘・鼡径靭帯・腸骨稜|第7~12肋軟骨内面・鼡頚靭帯・上前腸骨棘
停止:剣状突起・第5~7肋軟骨外面|鼡径靭帯・腹直筋鞘前葉・腸骨稜外唇|第10~12肋骨下縁・腹直筋鞘・精巣挙筋|剣状突起・白線・恥骨
体幹前面の筋肉・腹筋群は、深層から順に腹横筋・内腹斜筋・外腹斜筋・腹直筋の四層構造をしており、脊柱起立筋など腰と共働する筋肉に拮抗して、体幹を屈曲および回旋させる作用があります。
■腰痛改善のターゲットになる筋肉
●上背筋基部・大腿屈筋群・腸腰筋群そして腹筋群
では、実際に腰痛を改善するために筋トレで鍛えたりストレッチで柔軟をしたりするのはどの筋肉でしょう?
腰痛時は、その主たる部位の筋肉である長背筋群はすでに炎症や筋繊維裂傷を起こしているケースがほとんどですので、長背筋群自体を鍛えたりストレッチするのは避けるのが懸命です。無理に筋トレで負荷を与えると、症状がさらに悪化するおそれがあります。
ですので、長背筋自体ではなく、それをとりまく周辺の筋肉=上背筋基部・大腿屈筋群・腸腰筋群・腹筋群の筋トレと柔軟を行い、周りから少しずつ筋力向上と筋肉の柔軟化を図ります。これが「急がば回れ」の発想です。
■上背筋基部の筋トレと柔軟
●長背筋群に負荷がかからないように上から引く
・チューブラットプルダウン
腰痛改善のために行う上背筋基部の筋トレにおける最大のポイントは、長背筋群や腰椎に負荷がかからないように「上から引く動作の」トレーニング種目を行うことです。
そのなかでも最もおすすめなのが、ナロー&パラレルグリップでのチューブラットプルダウンです。これならば、長背筋群や腰椎に直接負荷を与えずに、周辺の上背筋基部を鍛えることが可能です。
・背中のストレッチ
そして、上背筋基部のトレーニングの前後に行いたいのが、この動画のような背中のストレッチです。反動を使わずにゆっくりジワジワと柔軟を行ってください。
■大腿屈筋群の筋トレと柔軟
●腹部を浮かせずベタ寝で動作する
・ダンベルレッグカール
大腿屈筋群の代表的なトレーニング種目がレッグカールです。ジムなどのレッグカールマシンがなくても、床でダンベルを使って行うことも可能です。
注意点としては腹部を浮かせないように、しっかりとヘソが接地した状態で行うことです。腹部が浮いてしまうと、腰椎に負荷がかかるので気をつけてください。なお、1セットの目安は20レップです。
・ハムストリングスのストレッチ
大腿屈筋群も加齢とともに劣化の起こりやすい部位です。動画のようなストレッチを行い、柔軟性を保つように心がけましょう。
■腸腰筋群の筋トレと柔軟
●腰椎に負担がかからないように座位で行う
・シーテッドレッグレイズ
腸腰筋の筋トレとして有効なのがレッグレイズなどの足上げ運動ですが、一般的な仰向けに寝た状態で行うレッグレイズは、腰椎に対する負担が強いためおすすめできません。
この動画のように、座った状態でのレッグレイズをおすすめします。なお、1セットの目安は20レップです。
・腸腰筋のストレッチ
加齢とともに筋力低下だけでなく筋肉硬化も起こしやすいのが腸腰筋群で、筋肉年齢が腸腰筋群の柔軟性で判別できるほどです。
膝を合わせ、膝が爪先より出ないようにしゃがんでみてください。うまくできない人は、腸腰筋群が硬化してきていると言えます。一日一回は動画のようなストレッチをする習慣を身につけましょう。
■腰痛でもできる腹筋トレーニング
腰痛を改善していくためには、腰周辺のインナーマッスルである脊柱起立筋(体幹を伸ばす作用)と対をなして、正反対の作用(体幹を曲げる作用)のある腹筋群をトレーニングしていくことも重要です。
全身の筋肉は全て対になっており、目的の筋肉を強くするためには、その対になった筋肉(拮抗筋)を鍛えることが大切なのは、広く知られています。
ここからは、腰痛でもできる腰に負担の少ないトレーニング方法を自重・チューブ・ダンベル・マシンの各筋トレメニューから厳選してご紹介します。
●自重ならリバースクランチ
腰痛対策としておすすめの腹筋自重トレーニングがリバースクランチです。膝を曲げたまま足を下ろさず、腰に負担の少ない背中が丸まった状態のまま、効率的に腹筋に負荷を加えることが可能です。
●チューブならチューブクランチ
トレーニングチューブを使った腹筋トレーニングのなかでも、背中を伸ばす必要がなく、腰に負担の少ないトレーニング方法がチューブクランチです。
息を吐きながら身体を曲げていき、最後に息を吐ききることで腹筋群を完全収縮させることができます。
●ダンベルならダンベルクランチ
ダンベルクランチは、腰に負担の少ない小さな動きで腹筋群を鍛えられるトレーニング方法です。
上半身を起こすのではなく、ダンベルを高く持ち上げる意識で行うことで、腰椎の稼働をなるべく抑えながら腹筋群を完全収縮させることができます。
●腰痛になりにくい腹筋運動
・カールアップがおすすめ

今回ご紹介している腹筋でも、まだ腰痛が不安な方には、腰への負担が少ないカールアップと呼ばれる種目がおすすめです。
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