
懸垂は毎日やってよいのでしょうか?
よくある誤解に「懸垂はウエイトトレーニングではなく自重トレーニングだから毎日やっていい」というものがありますが、これは間違いです。
その科学的な理由と適正な実施頻度について解説します。
■懸垂はウエイトトレーニング?
まずはじめに、懸垂に代表される自重トレーニングはウエイトトレーニングなのでしょうか?
答えはイエスです。
自重トレーニングは自身の体重を負荷ウエイトに使った、セルフウエイトトレーニングですので、一般的なウエイトトレーニング同様に超回復理論に基づいて実施頻度を決めなくてはいけません。
■超回復理論に基づいた懸垂の頻度
●超回復とは?

筋力トレーニングを実施すると、レジスタンス運動によって筋繊維は微細な裂傷を受け、その回復には数日を要します。そして、数日の回復期間の後、筋繊維はトレーニング前よりも強く太くなって回復します。これを「超回復」と言い、超回復を計画的に繰り返すことで筋力を向上させていくのが筋トレの基本的な考え方です。
一部ネット情報には「超回復に科学的根拠はない」という記載も散見されますが、実際には厚生労働省も認めている理論ですので、筋力トレーニングは超回復理論にのっとった実施が望ましいでしょう。
”筋肉はレジスタンス運動を行うと筋線維の一部が破断されます。それが修復される際にもとの筋線維よりも少し太い状態になります。これを「超回復」と呼び、これを繰り返すと筋の断面積が全体として太くなり筋力が上がります。筋力のトレーニングはこの仕組みを利用して最大筋力に近い負荷でレジスタンス運動し、筋が修復されるまで2~3日の休息ののち、またレジスタンス運動でトレーニングということの繰り返しによって行われます。(厚生労働省|e-ヘルスネット)”
▼厚生労働省公式ページ
●筋肉部位ごとの超回復期間

筋トレによってダメージを受けた筋繊維の超回復期間は、その部位によって長さが異なります。また、年齢・性別によっても回復速度は異なりますが、おおよその目安(20~30代男性基準)は以下の通りです。
・大胸筋:48時間
・三角筋:48時間
・上腕三頭筋:48時間
・僧帽筋:48時間
・広背筋:72時間
・上腕二頭筋:48時間
・腹筋群:24時間
・脊柱起立筋:72時間
・大臀筋:48時間
・大腿四頭筋:72時間
・ハムストリングス:72時間
・前腕筋群:24時間
・下腿三頭筋:24時間
■懸垂が効果のある筋肉部位
●広背筋の英語名称・構造・部位詳細・起始停止

読みかた:こうはいきん
英語名称:latissimus dorsi muscle
部位詳細:上部|下部
起始:下位第6胸椎~第5腰椎の棘突起・肩甲骨下角第9~12肋骨|正中仙骨稜・腸骨稜後方
停止:上腕骨小結節稜
●僧帽筋の英語名称・構造・部位詳細・起始停止

読みかた:そうぼうきん
英語名称:trapezius muscle
部位詳細:上部|中部|下部
起始:後頭骨上項線・外後頭隆起・頚椎棘突起|第7頚椎・第1~3胸椎棘突起|第4~12胸椎棘突起
停止:肩甲棘・肩峰
●上腕二頭筋の英語名称・構造・部位詳細・起始停止

読みかた:じょうわんにとうきん
英語名称:biceps
部位詳細:長頭|短頭
起始:肩甲骨関節上結節|肩甲骨烏口突起先端
停止:橈骨粗面
懸垂は、僧帽筋・広背筋・上腕二頭筋などの上半身の引く筋肉に効果があります。
順手懸垂では、広背筋→僧帽筋→上腕二頭筋の順に効果があり、逆手懸垂では上腕二頭筋→僧帽筋→広背筋の順に効果的です。
■懸垂は最低48時間を空けて実施する
懸垂が効果のある(負荷のかかる)、広背筋・僧坊筋・上腕に当筋の超回復期間はいずれも48時間です。
このことから、懸垂は最低でも48時間を空けて、つまり2日おきに実施するのがベストです。
もちろん、一回のトレーニングは確実に筋肉痛が起こるよう、厳しく追い込んで行うことが前提です。
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