下半身のチューブトレーニングは、女性のダイエット筋トレや男性のウエイトトレーニングの仕上げ・追い込みに最適な方法です。そのやり方を大腿四頭筋・ハムストリングス・臀筋群・内転筋群の部位別に詳しく解説します。
目次
■下半身の筋肉の構造と作用
●太もも前面の筋肉・大腿四頭筋
・大腿四頭筋の英語名称・構造・部位詳細・起始停止
読みかた:だいたいしとうきん
英語名称:quadriceps
部位詳細:大腿直筋|外側広筋|内側広筋|中間広筋
起始:腸骨下前腸骨棘・寛骨臼上縁|大腿骨大転子外側面・転子間線・殿筋粗面|大腿骨粗線内側唇|大腿骨前外側面
停止:膝蓋骨上縁・脛骨粗面|膝蓋骨上外側縁・頸骨粗面|膝蓋骨上内側縁・脛骨結節|膝蓋骨・頸骨粗面
大腿四頭筋は、下半身だけでなく全身でも最大の筋肉です。大腿直筋・外側広筋・内側広筋・中間広筋から構成され、膝関節の伸展と股関節の屈曲補助の作用があります。
●太もも後面の筋肉・ハムストリングス(大腿二頭筋・半腱様筋・半膜様筋)
・ハムストリングスの英語名称・構造・部位詳細・起始停止
読みかた:はむすとりんぐす
英語名称:hamstrings
部位詳細:大腿二頭筋長頭|大腿二頭筋短頭|半膜様筋|半腱様筋
起始:坐骨結節|大腿骨粗線外側唇・外側筋間中隔|坐骨結節|坐骨結節内側面
停止:腓骨頭|腓骨頭|脛骨内側顆・斜膝窩靭帯|脛骨粗面内側
ハムストリングスは大腿二頭筋・半腱様筋・半膜様筋から構成され、膝関節を屈曲させる作用があります。
●太もも内側の筋肉・内転筋群
・内転筋群の英語名称・構造・部位詳細
読みかた:ないてんきんぐん
英語名称:adductors muscles
部位詳細:大内転筋|長内転筋|短内転筋|薄筋|恥骨筋
内転筋群は大内転筋・小内転筋・長内転筋・短内転筋から構成され、股関節を内転させる作用があります。
●お尻の筋肉・臀筋群
・臀筋群の英語名称・構造・部位詳細・起始停止
読みかた:でんきんぐん
英語名称:gluteus muscles
部位詳細:大臀筋|中臀筋|小臀筋
起始:腸骨稜・腸骨翼|腸骨翼殿筋面・腸骨稜|腸骨翼
停止:大腿筋膜外側部・大腿骨粗面|大腿骨大転子尖端|大腿骨大転子前面
臀筋群は、大臀筋・中臀筋・小臀筋の三層構造をしており、股関節を伸展させる作用があります。
●ふくらはぎの筋肉・下腿三頭筋
・下腿三頭筋の英語名称・構造・部位詳細・起始停止
読みかた:かたいさんとうきん
英語名称:triceps muscle of calf
部位詳細:腓腹筋外側頭|腓腹筋内側頭|ヒラメ筋
起始:大腿骨外側上顆|大腿骨内側上顆|腓骨頭・脛骨後面
停止:踵骨隆起|踵骨隆起|踵骨隆起
ふくらはぎの筋肉である下腿三頭筋は、腓腹筋外側頭・腓腹筋内側頭・ひらめ筋の三部位から構成されており、つま先を伸ばす作用を持ちます。
全身の筋肉のなかでも、日常での使用頻度がもっとも高い筋肉群であるため、負荷に対する耐性が高く、筋トレで鍛えにくい部位としても知られています。
■チューブトレーニングの効果を上げる方法
チューブトレーニングの効果を上げるためには、トレーニングチューブの特性、チューブ筋トレの特徴をしっかりと把握して取り組む必要があります。
①自重筋トレやダンベルトレーニングと組み合わせる
チューブトレーニングはそれ単体で行うよりも、まずは高負荷で筋肉を刺激することのできる自重トレーニングやダンベルトレーニングの複合関節種目(複数の筋肉と関節を同時に使う種目)を行った後に、追い込みや仕上げとして行うことで効果を高めることができます。
②筋肉の伸展時に負荷が抜けないように構える
各トレーニング種目での筋肉の伸展ポジションで、トレーニングチューブがたるんで負荷が完全に抜けてしまうと筋トレ効果が落ちてしまいます。必ず、筋肉の伸展時にもテンションがかかるようにトレーニングチューブをセットして構えてください。
③漸増負荷特性を意識して筋肉を最大収縮させる
トレーニングチューブはゴムの持つ「伸びるほど負荷が増加する」という「漸増負荷特性」を利用することで、効率的な筋トレを実現することが可能です。ゴムのテンションを感じながら、しっかりとターゲットにした筋肉を完全収縮するようにしてください。
④筋トレ目的に合わせたチューブの強度設定をする
筋トレで鍛える骨格筋を構成している筋繊維には以下の三種類があり、それぞれの特徴は次の通りです。
①速筋繊維TYPE2b
およそ10秒以内の短時間に瞬発的な収縮をし、鍛えると強く筋肥大します。10回前後の反復回数で限界がくる重さの設定で鍛えます。
②速筋繊維TYPE2a
30~60秒ほどの持続的かつ瞬発的な収縮をし、鍛えると程よく筋肥大します。15回前後の反復回数で限界がくる重さの設定で鍛えます。
③遅筋繊維TYPE1
60秒以上の持久的な収縮をし、鍛えると筋密度が向上し引き締まります。20回以上の反復回数で限界がくる重さの設定で鍛えます。
つまり、バルクアップ目的なら①、細マッチョや女性の部分ボリュームアップ目的なら②、引き締めダイエット目的なら③、の負荷回数設定で筋トレを行っていきます。
チューブトレーニングの場合は、チューブ自体の強度の選定・チューブの張り方などで調整するほか、必要に応じて複数本のトレーニングチューブを束ねて使用してください。
■超回復とは
筋肉は筋トレによって負荷を受けると、筋繊維が破壊されます。そして、回復する時に、負荷を受ける前よりも強くなって回復する能力が備わっており、これを「超回復」と呼びます。
この超回復という筋肉の特性を利用し、定期的に筋トレによって意図的に筋繊維を破壊し、筋肉を強くしていくのが「筋トレと超回復」の基本理論です。
よく「超回復理論は証明されていない」と言う記載もありますが、公的機関のホームページにもしっかりと記載されていますので、筋トレはやはり超回復理論にのっとって行うことが大切です。
●筋トレ(無酸素運動)と超回復理論に関する公的情報
”筋肉はレジスタンス運動を行うと筋線維の一部が破断されます。それが修復される際にもとの筋線維よりも少し太い状態になります。これを「超回復」と呼び、これを繰り返すと筋の断面積が全体として太くなり筋力が上がります。筋力のトレーニングはこの仕組みを利用して最大筋力に近い負荷でレジスタンス運動し、筋が修復されるまで2~3日の休息ののち、またレジスタンス運動でトレーニングということの繰り返しによって行われます。(厚生労働省|e-ヘルスネット)”
▼厚生労働省公式ページ
筋トレの呼吸法|筋トレの頻度|筋トレの順番|筋トレの回数設定|筋肉の名前と作用|筋肉の超回復期間|筋トレの食事例|筋トレの栄養学|男性の筋トレメニュー|女性の筋トレメニュー
■推奨されるトレーニングチューブ
トレーニングチューブにはさまざまな製品がありますが、執筆者の運営するジムで実際に使用し、また運営ショップで取り扱っているのがこちらのタイプです。
最大の特徴は、一般的なタイプに比べて大型のカラビナフックが付属していることで、ケーブルマシン用の各種アタッチメントなど幅広いグリップ・ハンドルが装着できることです。
また、仲介業者を介さず工場から直接仕入れをしているため、リーズナブルに提供できています。
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■まずはアップで自重スクワットから
●強度別に2種類をご紹介
トレーニングチューブを使った下半身トレーニングは、あくまでも「負荷を追加した筋トレ」ですので、いきなりチューブトレーニングからスタートするのではなく、まずはアップとして、強度の低い自重だけで行うスクワットを行うことをおすすめします。
スクワットには多くの種類がありますが、一般的な自重スクワットと、スクワット運動が苦手な方のための低強度バリエーションをご紹介します。
●基本的な自重スクワットのやり方
ノーマルスクワットは大腿四頭筋・ハムストリングス・大臀筋の全体にまんべなく効くのが特徴で、あらゆる下半身トレーニングの基本となる種目です。
背中を反らせ(胸を張り)、やや上を見るのがフォームの基本です。椅子に座るようなイメージで若干斜め後ろに腰を下ろしてください。また、膝がつま先より前に出ると、膝関節を痛める原因になりますので注意が必要です。
●椅子スクワット
自重スクワットをさらに低強度にし、やりやすくしたのが、こちらのように椅子に座る動作で大腿四頭筋や下半身全体を鍛えることができる椅子スクワットです。
視線をやや斜め上にすることを意識すれば、自然と正しいフォームになります。また、椅子に座る軌道がそのまま正しいスクワットのしゃがみ方と同じですので、スクワットの練習にもおすすめです。
■下半身全体のチューブトレーニング
●チューブスクワット
下半身のトレーニングの基本であるスクワットをチューブの負荷で強度を高めた種目がチューブスクワットです。
胸を張り、お尻を突き出し背中を反らせ、やや上を見て動作をすると正しいフォームになります。また、膝関節保護のため、膝をつま先より前に出さないように気をつけ、やや斜め後方にしゃがむようにしてください。
●チューブレッグプレス
チューブレッグプレスも下半身全体に効果の高いチューブトレーニングです。
下半身前面に効果のある足を押し出す時だけでなく、戻す時も負荷に耐えながらゆっくり動作することで、下半身背面のハムストリングスや臀筋群に効果的です。
■大腿四頭筋のチューブトレーニング
●チューブシシースクワット
チューブシシースクワットは、後傾して行うため姿勢の制御が難しい自重シシースクワットに、ゴムバンドの張力を加えることでバランスをとりやすくしたバリエーションです。
●チューブレッグエクステンション
チューブレッグエクステンションは、大腿四頭筋を集中的に追い込めるチューブトレーニングです。脚を伸ばした時に足首を曲げると、さらに効果が高まります。
ダイエット筋トレの場合は20~30回の高反復回数で行うのに適した種目です。
■ハムストリングスのチューブトレーニング
●チューブブルガリアンスクワット
チューブブルガリアンスクワットは、ハムストリングスから臀筋群にかけての下半身背面に高い負荷を加えられるバリエーションです。
ポイントは後ろにした足に意識を集中させ、その足を動作の主働としてトレーニングを行うことです。
●チューブフロントランジ
チューブフロントランジは、ハムストリングスから臀筋群にかけての下半身背面に効果的な自重フロントランジに、トレーニングチューブの負荷を追加することで、太もも前側も同時に鍛えられる高負荷トレーニングです。
●チューブレッグカール
チューブカールはハムストリングスを集中的に鍛えられるチューブトレーニングです。脚を曲げた時に足首を伸ばすと、さらに効果が高まります。
■内転筋群のチューブトレーニング
●チューブワイドスクワット
チューブワイドスクワットは、通常のチューブスクワットより足幅を広くとって行うバリエーションで、太もも内側に位置する内転筋群にも効果的なやり方です。
膝関節保護のため、常に膝はつま先と平行にするように動作し、内股や外股にならないように気をつけてください。
●チューブサイドランジ
チューブサイドランジは、自重でのサイドランジにゴムバンドの負荷を追加したトレーニング方法で、内転筋群に集中的な効果があります。
ポイントは、伸ばしたほうの足に意識を集中させて主働させることです。
●チューブアダクション
チューブアダクションは、内転筋群の強化や引き締めに最適なトレーニング方法です。
内転筋群はインナーマッスルですので、20回以上の低負荷高回数で鍛えてください。
■臀筋群のチューブトレーニング
●チューブバックレッグリフト
チューブバックレッグリフトは臀筋群の強化や女性のヒップアップに最適なチューブトレーニング種目です。
やや動作が難しいですが、動画を参考にチャレンジしてみてください。
■下腿三頭筋のチューブトレーニング
●チューブカーフレイズ
ふくらはぎの筋肉・下腿三頭筋を集中的に鍛えられる種目がチューブカーフレイズです。しっかりとつま先立ちをして下腿三頭筋を完全収縮させるとともに、かかともしっかりと下ろして折り返し点で筋肉を完全伸展するようにしてください。
つま先部分に板などを置いて行うと、可動域が広がり効果が倍増します。
なお、ふくらはぎは日常での使用頻度が高く、通常の回数設定では効果が出にくいので、30回以上の高反復回数で行うことをおすすめします。
■最強のハイブリッド筋肥大メソッド
①自重トレーニング+トレーニングチューブ
チューブトレーニングは、それ単体では筋肥大効果はあまり強くありませんが、自重トレーニングに負荷としてチューブの漸増負荷を加えることで、大きな筋肥大効果が期待できます。
●スクワット+トレーニングチューブ
こちらの動画が、スクワットにトレーニングチューブの負荷を追加したやり方です。
大腿四頭筋・ハムストリングス・大臀筋の全体にまんべなく効くのが特徴で、あらゆるスクワットトレーニングの基本となる種目です。
背中を反らせ(胸を張り)、やや上を見るのがフォームの基本です。椅子に座るようなイメージで若干斜め後ろに腰を下ろしてください。また、膝がつま先より前に出ると、膝関節を痛める原因になりますので注意が必要です。
トレーニングチューブをかかとで踏み、斜め後方へのテンションをかけると、正しいフォームで動作が行いやすくなります。
②ダンベル筋トレ+トレーニングチューブ
トレーニングチューブの漸増負荷をダンベル筋トレと組み合わせることで、とても強い筋肥大効果が得られることが知られており、ボディービル選手などにも使用者は少なくありません。
●ダンベルスクワット+トレーニングチューブ
こちらの動画が、ダンベルスクワットにトレーニングチューブの負荷を追加したやり方です。
ダンベルスクワットの動作のポイントは、胸を張りやや背中を反らせた状態で行うこと、椅子に座るようなイメージで斜め後ろに腰を下ろしていくことです。
この時にやや上を見るようにすると姿勢が維持しやすくなります。また、膝がつま先より前に出ないようにすることは、膝関節の保護のためにスクワット系種目の全てに共通する注意点です。
なお、動画のダンベルワイドスクワットは、相撲の四股を踏んだような状態になることから、ダンベルスモウスクワットととも呼ばれており、バランスがとりやすいことからチューブトレーニングと組み合わせるのに最適な種目と言えます。
動作ポイントとして重要なのは、膝を痛めないために、内股動作や外股動作にならないよう、必ず膝をつま先の方向に曲げていくことです。
■部位別チューブトレーニング
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執筆者情報
上岡岳
アームレスリング元日本代表
ジムトレーナー・生物学学芸員
JAWA日本アームレスリング連盟常任理事|レフリー委員長・広報広報部長
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