胸の筋肉・大胸筋のダンベルを使った鍛え方を、筋肉の部位別(上部・内側・下部)のそれぞれに、代表的な筋トレメニューを厳選して解説します。
目次
■大胸筋の構造と作用
●上部・内側・下部から構成される
大胸筋は上部・内側・下部の三部位に分けられます。それぞれの主な作用は以下の通りです。
大胸筋上部:腕を斜め上方に押し出す
大胸筋内側:腕を前方で閉じる
大胸筋下部:腕を斜め下方に押し出す
Wikipediaによる記載
大胸筋(だいきょうきん)は、胸部の筋肉のうち、胸郭外側面にある胸腕筋のうち、鎖骨、胸骨と肋軟骨(第2~第7前面)、腹直筋鞘の3部を起始とし、上外方に集まりながら、上腕骨の大結節稜に停止する。
大胸筋を鍛える筋力トレーニング法には多くの種目が存在する。最も手軽で一般的なのはプッシュアップ(腕立て伏せ)であり、バーベルを使ったベンチプレス、ダンベルを使ったダンベル・フライなどもよく知られている。身体前面に位置し、もっとも目立つ筋肉の一つであることからボディビルなどでは重要視される筋肉の一つ。
■大胸筋のダンベル種目一覧(動画つき解説)
■筋トレ目的別の負荷重量設定
筋トレで鍛える骨格筋を構成している筋繊維には以下の三種類があり、それぞれの特徴は次の通りです。
①速筋繊維TYPE2b
約10秒前後の短い時間に爆発的・瞬発的な収縮をする特徴があり、トレーニングにより強く筋肥大します。10回前後の反復回数で限界がくる重量設定で鍛えます。
②速筋繊維TYPE2a
10~60秒ほどのやや長時間で瞬発的な収縮をする特徴があり、トレーニングによりやや筋肥大します。15回前後の反復回数で限界がくる重量設定で鍛えます。
③遅筋繊維TYPE1
60秒以上数分・数時間の持続的・持久的な収縮をする特徴があり、トレーニングにより筋肥大せずに筋密度が上がります。20回以上の反復回数で限界がくる重量設定で鍛えます。
つまり、筋肥大バルクアップ目的なら①、細マッチョ筋トレや女性の部分ボリュームアップ目的なら②、減量引き締めダイエット目的なら③、の負荷回数設定で筋トレを行っていきます。ただし、腹筋郡・前腕筋郡・下腿三頭筋など日常での使用頻度が高い部位は、基本的に20回以上高反復回数で鍛えます。
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■大胸筋全体の代表的種目
●ダンベルプレス
ダンベルプレスは、大胸筋全体に効果があります。また、二次的に三角筋と上腕三頭筋にも効果的です。
ダンベルプレスは、常に手首の真下に肘がくるように動作するのが、効率的に大胸筋に負荷をかけるポイントです。この位置関係がずれてしまうと負荷が三角筋や腕に逃げてしまいます。
また、構えるときは肩甲骨を寄せ軽くブリッジを組み、肩甲骨のトップ二箇所と臀部の合計三点で身体を支えるようにします。
【本種目のやり方とフォームのポイント】
①ベンチに仰向けになり、肩甲骨をしっかりと寄せ、胸の上にダンベルを上げて構える
②肩甲骨を寄せたまま、ダンベルを下ろしていきますが、肩のラインよりも頭側には下ろさないように注意する
③ダンベルをできるだけ深く下ろしたら、肩甲骨を寄せたまま、腰を浮かせないように注意してダンベルを押し上げる
④ダンベルを押し上げたら、軽く顎を引いて大胸筋を完全に収縮させる
ダンベルプレスは、肩関節よりも頭側にダンベルを下ろすと肩関節を怪我しますので注意してください。また、できるだけ深くダンベルを下ろすことが重要で、浅いダンベルプレスはダンベルトレーニング最大のメリットである「可動域が広く筋肉を最大伸展できる」ということを活用できていないということになりますので、可能なかぎり深くダンベルを下ろしてください。
ピラミッドセット法|ドロップセット法|アセンディングセット法|ディセンディングセット法|フォースドレップ法|レストポーズ法|パーシャルレップ法|チーティング法|スーパーセット法|コンパウンドセット法|トライセット法|ジャイアントセット法|予備疲労法|部位分割法
■大胸筋上部の代表的種目
●インクラインダンベルプレス
インクラインダンベルプレスは、大胸筋のなかでも上部に効果があります。また、二次的に三角筋と上腕三頭筋にも効果的です。
この種目は、斜め上方への軌道により大胸筋上部に効果の高いトレーニングですが、セット終盤で苦しくなって腰を浮かせてしまうと、その軌道が通常のダンベルプレスと変わらなくなりますので、最後まで腰をベンチにつけて動作を行ってください。
【本種目のやり方とフォームのポイント】
①インクラインベンチに仰向けになり、肩甲骨をしっかりと寄せ、胸の上にダンベルを上げて構える
②肩甲骨を寄せたまま、ダンベルを下ろしていきますが、肩のラインよりも頭側には下ろさないように注意する
③ダンベルをできるだけ深く下ろしたら、肩甲骨を寄せたまま、腰を浮かせないように注意してダンベルを押し上げる
④ダンベルを押し上げたら、軽く顎を引いて大胸筋上部を完全に収縮させる
●インクラインダンベルフライ
インクラインダンベルフライは、大胸筋の上部内側を鍛えるのに効果的なダンベルトレーニングです。ポイントはフィニッシュポジションでダンベルを押し上げる意識をして大胸筋を最大収縮させることです。また、この時にやや顎を引くようにするとさらに効果は高まります。
【本種目のやり方とフォームのポイント】
①インクラインベンチに仰向けになり、肩甲骨をしっかりと寄せ、胸の上にダンベルを上げて構える
②肩甲骨を寄せたまま、腕を開いてダンベルを下ろしていきますが、肩のラインよりも頭側には下ろさないように注意する
③ダンベルをできるだけ深く下ろしたら、肩甲骨を寄せたまま、腰を浮かせないように注意して、肘を伸ばしたまま腕を閉じていく
④腕を胸の上で閉じたら、軽く顎を引いて大胸筋を完全に収縮させる
■大胸筋内側の代表的種目
●ダンベルフライ
ダンベルフライは、まず、やや肘を曲げ可能な限りダンベルを下ろします。
次に大胸筋を意識しながら肘はやや曲げたまま腕を閉じていきます。この時に、やや顎を引くことも意識してください。
腕を閉じきったフィニッシュポジションになったら、ここではじめて肘を伸ばし、大胸筋を絞るようなイメージでダンベルを押し上げ、大胸筋を完全収縮させます。
そして、再びやや肘を曲げダンベルを下ろしていきます。なお、ダンベルの保持方向は縦(背骨と平行)と横(腕と平行)の二種類があり、やや刺激が異なるので、縦持ちのセットと横持ちのセットをそれぞれ行うとよいでしょう。
【本種目のやり方とフォームのポイント】
①ベンチに仰向けになり、肩甲骨をしっかりと寄せ、胸の上にダンベルを上げて構える
②肩甲骨を寄せたまま、腕を開いてダンベルを下ろしていきますが、肩のラインよりも頭側には下ろさないように注意する
③ダンベルをできるだけ深く下ろしたら、肩甲骨を寄せたまま、腰を浮かせないように注意して、肘を伸ばしたまま腕を閉じていく
④腕を胸の上で閉じたら、軽く顎を引いて大胸筋を完全に収縮させる
ダンベルフライでダンベルを下ろす位置は、ダンベルが肩より頭側に来ないように注意してください。肩より頭側で動作を行うと、肩関節に対して「開き負荷」がかかり、肩関節を痛める原因になります。
また、重量を重く設定しすぎて、ダンベルを下ろしたポジションで反動を使って折り返す動作を行うのも、肩関節および周辺靭帯に悪影響がありますので十分に注意してください。
■大胸筋下部の代表的種目
●デクラインダンベルプレス
デクラインダンベルプレスは、大胸筋のなかでも下部に効果があります。また、二次的に三角筋と上腕三頭筋にも効果的です。
本種目は、斜め下方への軌道により大胸筋下部に効果の高いトレーニングですが、インクラインと違いセット終盤で腰を浮かせてセルフ補助をしても、さらに大胸筋下部に効果的な斜め下方軌道が強まるので、最後に腰を浮かせて動作をするのも間違いではありません。
【本種目のやり方とフォームのポイント】
①デクラインベンチに仰向けになり、肩甲骨をしっかりと寄せ、胸の上にダンベルを上げて構える
②肩甲骨を寄せたまま、ダンベルを下ろしていきますが、肩のラインよりも頭側には下ろさないように注意する
③ダンベルをできるだけ深く下ろしたら、肩甲骨を寄せたまま、腰を浮かせないように注意してダンベルを押し上げる
④ダンベルを押し上げたら、軽く顎を引いて大胸筋下部を完全に収縮させる
●デクラインダンベルフライ
ダンベルデクラインフライは、構える向きとして、上半身が斜め下方になりますので、意識を怠るとダンベルを肩のラインより頭側に下ろしてしまいます。
こちらの画像が、ダンベルフライにおける肩とダンベルの正しい位置関係を示したもので、肩のラインよりもヘソ側にダンベルを下ろすことが、肩関節に開き負荷を与えないために重要です。
また、肩甲骨をしっかりと寄せたまま動作することも大切で、肩甲骨の寄せが甘いと、肩から初動してしまい、肩関節に大きな負担になりますので十分に注意してください。
■ダンベルフライとダンベルプレスの違い
●最大の差異は単関節運動と複合関節運動の違い
ダンベルフライとダンベルプレスの効果の違いについて一言で表現すれば「大胸筋にキレを出すのがダンベルフライで、大胸筋にバルクをつけるのがダンベルプレス」となります。
ダンベルプレスは、筋肉は主に大胸筋・三角筋・上腕三頭筋と3つ、関節は主に肩関節・肘関節と2つを使って行うコンパウンド種目(複合関節運動)です。このため、高重量で大胸筋に負荷を加えることができるので、大胸筋の筋肥大(バルクアップ)に最適なダンベルトレーニングです。
一方、ダンベルフライは筋肉は大胸筋、関節は肩関節と単一の筋肉と関節だけを使うアイソレーション種目(単関節運動)です。このため、高重量で行うことはできませんが、大胸筋だけを集中して鍛えることができる仕上げや追い込みむけのダンベルトレーニングになります。
これらのことから、大胸筋のダンベルトレーニングは、まず高重量のダンベルプレスで負荷をかけ、その後にダンベルフライで仕上げをするのが定石です。
つまり、ダンベルフライはバルクアップ(筋肥大)にはあまり適しませんが、大胸筋のスジを深めたり、大胸筋中央部の谷間を深めたりするのに適した種目です。しかし、プログラムの組み方によっては筋肥大を行うことも可能です。
■大胸筋の発達停滞期に有効
●ダンベルベントアームプルオーバー
この図のように、肘を曲げて行うベントアームプルオーバーでは大胸筋に負荷がかかります。プルオーバーは大胸筋に対して数少ない縦方向の収縮をもたらす種目ですので、筋肉が刺激に慣れてきたころ(発達停滞期)に組み込むとたいへん効果的です。
【本種目のやり方とフォームのポイント】
①ベンチに仰向けになり、肘を直角に曲げ、胸の上でダンベルを構える
②肘の角度を動かさずに、肩甲骨を寄せながらダンベルを頭の後ろに下ろしていく
③ダンベルを下ろしたら、肩甲骨を開放しながらダンベルを元の位置まで上げていく
④ダンベルを上げたら、肘を寄せるように肩甲骨を開放し、大胸筋を完全に収縮させる
■大胸筋の土台を作る
●胸郭トレーニングも大事
・大胸筋の土台を広げるメソッド
また、大胸筋を発達させていくためには、大胸筋自体の筋トレだけでなく、その土台となる胸郭を広げていくことも非常に重要です。
▼胸郭の拡張トレーニング
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■ダンベルトレーニングの基礎知識
●ダンベルトレーニングの長所と短所
ダンベル筋トレは複数の筋肉を同時に高重量で鍛えるコンパウンド種目から、個別の筋肉をじっくり鍛えるアイソレーション種目まで種目数が豊富で、自宅筋トレでは中心となるトレーニング法です。また、バーベル筋トレよりも可動域が広くとれるというのも大きな長所です。
逆に、片手でウエイトを保持するため安定が悪く、バーベルやマシンでの筋トレに比べると高重量が扱いにくくなります。また、ダンベルやベンチ類など器具をそろえる必要もあります。
しかしながら、自宅で筋肥大バルクアップしようと思えば、やはりダンベルトレーニングの一択ではあります。
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執筆者情報
上岡岳
アームレスリング元日本代表
ジムトレーナー・生物学学芸員
JAWA日本アームレスリング連盟常任理事|レフリー委員長・広報広報部長
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