ダンベルフライの種類・バリエーションとその効果的なやり方、目的別に適切な重量・負荷・回数設定について解説します。あわせて、床での行い方や肩を痛めないためのポイントも解説します。
目次
■ダンベルフライが効果のある筋肉は?
●ダンベルフライは大胸筋内側に効果的
ダンベルフライは胸の筋肉・大胸筋のなかでも特に内側に効果的です。
■ダンベルフライとダンベルプレスの違い
●最大の差異は単関節運動と複合関節運動の違い
ダンベルフライとダンベルプレスの効果の違いについて一言で表現すれば「大胸筋にキレを出すのがダンベルフライで、大胸筋にバルクをつけるのがダンベルプレス」となります。
ダンベルプレスは、筋肉は主に大胸筋・三角筋・上腕三頭筋と3つ、関節は主に肩関節・肘関節と2つを使って行うコンパウンド種目(複合関節運動)です。このため、高重量で大胸筋に負荷を加えることができるので、大胸筋の筋肥大(バルクアップ)に最適なダンベルトレーニングです。
一方、ダンベルフライは筋肉は大胸筋、関節は肩関節と単一の筋肉と関節だけを使うアイソレーション種目(単関節運動)です。このため、高重量で行うことはできませんが、大胸筋だけを集中して鍛えることができる仕上げや追い込みむけのダンベルトレーニングになります。
これらのことから、大胸筋のダンベルトレーニングは、まず高重量のダンベルプレスで負荷をかけ、その後にダンベルフライで仕上げをするのが定石です。
つまり、ダンベルフライはバルクアップ(筋肥大)にはあまり適しませんが、大胸筋のスジを深めたり、大胸筋中央部の谷間を深めたりするのに適した種目です。しかし、プログラムの組み方によっては筋肥大を行うことも可能です。
■ダンベルフライのやり方と効果的なフォーム
こちらが理想的なダンベルフライのフォームの動画です。 やや肘を曲げ、可能な限りダンベルを下ろします。
次に大胸筋を意識しながら肘はやや曲げたまま腕を閉じていきます。この時に、やや顎を引くことも意識してください。
腕を閉じきったフィニッシュポジションになったら、ここではじめて肘を伸ばし、大胸筋を絞るようなイメージでダンベルを押し上げ、大胸筋を完全収縮させます。
そして、再びやや肘を曲げダンベルを下ろしていきます。なお、ダンベルの保持方向は縦(背骨と平行)と横(腕と平行)の二種類があり、やや刺激が異なるので、縦持ちのセットと横持ちのセットをそれぞれ行うとよいでしょう。
【本種目のやり方とフォームのポイント】
①ベンチに仰向けになり、肩甲骨をしっかりと寄せ、胸の上にダンベルを上げて構える
②肩甲骨を寄せたまま、腕を開いてダンベルを下ろしていきますが、肩のラインよりも頭側には下ろさないように注意する
③ダンベルをできるだけ深く下ろしたら、肩甲骨を寄せたまま、腰を浮かせないように注意して、肘を伸ばしたまま腕を閉じていく
④腕を胸の上で閉じたら、軽く顎を引いて大胸筋を完全に収縮させる
▼コラム記事
【ダンベルフライ】ただ開閉するだけで効いてるの?トドメの一押しが肝心

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■ダンベルフライで肩を痛めないために
●ダンベルを下ろすラインに注意する
ダンベルフライを行う時は、ダンベルが肩より頭側に来ないように注意してください。肩より頭側で動作を行うと肩関節を痛める原因になります。
また、重量を重く設定しすぎて、ダンベルを下ろしたポジションで反動を使って折り返す動作を行うのも、肩関節および周辺靭帯に悪影響がありますので十分に注意してください。
ダンベルフライでダンベルを下ろす位置は、ダンベルが肩より頭側に来ないように注意してください。肩より頭側で動作を行うと、肩関節に対して「開き負荷」がかかり、肩関節を痛める原因になります。
また、重量を重く設定しすぎて、ダンベルを下ろしたポジションで反動を使って折り返す動作を行うのも、肩関節および周辺靭帯に悪影響がありますので十分に注意してください。
●肩甲骨の寄せ方が弱い
ダンベルフライで肩を痛めるもう一つの理由が、肩甲骨の寄せ方が弱いということです。
肩甲骨の寄せ方が弱いと、下ろしたダンベルを上げ始める初動で、大胸筋の収縮よりも肩(三角筋)が先に動いて収縮してしまいます。
三角筋はかなり小さな筋肉ですので、大胸筋に負荷をかけるために設定した重量には耐えきれません。結果として肩(三角筋)の付け根を痛めてしまうことになります。
●肩に負担をかけにくいダンベルフライ
それでも、ダンベルフライで肩が痛くなる、ダンベルフライが肩に効いてしまう、という方は、手の平が向き合う方向にダンベルを握って行う、ハンマーグリップのダンベルフライをお試しください。
経験上、かなり、肩への負担が軽減されます。

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■ダンベルフライの呼吸法
通常の筋トレでは、「力を入れながら息を吐く」のが正しい呼吸方法ですが、ダンベルフライの場合はこの呼吸を行うと大胸筋の収縮中に胸郭がしぼんでしまうため筋肉を完全収縮させることができなくなってしまいます。
ですので、ダンベルフライにおいてはトップポジションで呼吸をすませ、肺に息を大きくため、息を止めたままダンベルを下げて上げるというのが効果的な呼吸方法になります。
■ダンベルフライが効かない?
「ダンベルフライが効かない」という方のほとんどが、ダンベルの重量を重く設定しすぎており、ダンベルプレスなのかダンベルフライなのかわからないようなフォームで行っています。
ダンベルフライは重量を追求する種目ではなく、いかに大胸筋を最大伸展から最大収縮させるかが重要ですので、しっかりとコントロールできる重量設定で行ってください。
●ダンベルフライで大胸筋を最大伸展させるコツ
ダンベルフライで大胸筋を最大伸展させるためには、できるだけ下までダンベルを下ろすことが唯一の方法です。
初心者の方に多いのが、ダンベルの重さを重く設定してしまうミスで、ダンベルの重量は「下までダンベルを下ろしたポジションでも挙げられる重量」です。
また、肩に痛みを感じてダンベルを深く下ろせない場合は、手の平が向き合う構え(ハンマーグリップ)で行うとともに、肩のラインよりもややヘソ側にダンベルを下ろすと、肩への負荷が軽減されます。
なお、ダンベルフライが肩にばかり効いてしまう方は、肩甲骨の寄せが甘く、ダンベルを挙げる初動が三角筋主働になっており、大胸筋が十分に使われていないことが考えられます。
●ダンベルフライで大胸筋を最大収縮させるコツ
ダンベルフライで大胸筋を最大収縮させるためには、腕を閉じたフィニッシュポジションで、ダンベル同士を合わせ、やや上方に押し出すことで大胸筋が完全収縮します。
■ダンベルフライの目的別の重量負荷設定
筋トレで鍛える骨格筋を構成している筋繊維には以下の三種類があり、それぞれの特徴は次の通りです。
①速筋繊維TYPE2b
約10秒前後の短い時間に爆発的・瞬発的な収縮をする特徴があり、トレーニングにより強く筋肥大します。10回前後の反復回数で限界がくる重量設定で鍛えます。
②速筋繊維TYPE2a
10~60秒ほどのやや長時間で瞬発的な収縮をする特徴があり、トレーニングによりやや筋肥大します。15回前後の反復回数で限界がくる重量設定で鍛えます。
③遅筋繊維TYPE1
60秒以上数分・数時間の持続的・持久的な収縮をする特徴があり、トレーニングにより筋肥大せずに筋密度が上がります。20回以上の反復回数で限界がくる重量設定で鍛えます。
つまり、筋肥大バルクアップ目的なら①、細マッチョ筋トレや女性の部分ボリュームアップ目的なら②、減量引き締めダイエット目的なら③、の負荷回数設定で筋トレを行っていきます。ただし、腹筋郡・前腕筋郡・下腿三頭筋など日常での使用頻度が高い部位は、基本的に20回以上高反復回数で鍛えます。
●ダンベルフライの適正重量
結論を先に言えば、ダンベルプレスなど複数の関節・筋肉を同時に使う複合関節運動(コンパウンド種目)に対し、ダンベルフライは肩関節と大胸筋だけを使う単関節運動(アイソレーション)種目です。
ですので、ダンベルフライの場合、ダンベルプレスのように高重量低レップの重量設定では効果が低く、中重量中レップで行うのが最適な重さの決め方です。
■ダンベルフライの種類やバリエーション
●インクラインダンベルフライ
こちらが、大胸筋上部内側に効果のあるインクラインダンベルフライの模範的な動画です。斜め上方に腕を閉じる軌道をとるため、大胸筋のなかでも上部内側に高い効果があります。
インクラインダンベルプレスならソファーなどにもたれて行うことで代用が可能ですが、インクラインダンベルフライを行いたい場合は、インクラインベンチを入手する必要があります。
●デクラインダンベルフライ
一方、ベンチをデクラインに設定して行うデクラインダンベルフライでは斜め下方に腕を閉じる軌道になることから、大胸筋のなかでも下部内側に高い効果があります。
●フロアーダンベルフライ
トレーニングベンチがない場合のダンベルフライのやり方の動画がこちらになります。
ただし、床で行うと床より下にダンベルを下げることができないため、ダンベルフライで最も重要な要素である「できるだけダンベルを下ろす」=「大胸筋を最大伸展させる」という動作ができなくなります。これは、背中にクッションなどを当てることで多少は改善されます。
●ダンベルフライプレス
また、大胸筋の発達停滞期におすすめなのが、ダンベルプレスとダンベルフライのハイブリッド種目であるダンベルフライプレスです。くわしくは、下記の筋トレ専門サイトの記事をご参照ください。
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【ダンベルフライプレス】大胸筋の発達停滞期におすすめのハイブリッド筋トレ
■ダンベルトレーニングにおすすめの器具類
●おすすめのダンベル
筆者の運営するジムでは、左から順にアジャスタブルダンベル・アーミーダンベル・スピンロック式ダンベルといったさまざまなタイプのダンベルを使用しています。
また、スピンロック式ダンベルもプラコートタイプ・ラバータイプ・アイアンタイプなどを使用しています。
ダンベルにはそれぞれの種類で長所と短所がありますが、男性ならラバーダンベル・女性ならアーミーダンベルが、ご家族や男女兼用で使用するのであればアジャスタブルダンベルがおすすめです。
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【ダンベルの種類と重さの決め方】男女それぞれにおすすめのタイプと筋肉部位別の鍛え方
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【おすすめダンベルセットと種類】何キロを買えばいい?男性なら60kg女性なら20kg
●おすすめのベンチ類
ダンベルトレーニングの幅を広げ、筋トレ効率を高めてくれるのがベンチ類です。予算に応じて最低でもフラットベンチ、できればインクラインベンチを入手することをおすすめします。
なお、トレーニングベンチ各種類別のメリット・デメリットやおすすめのタイプについては下記の記事をご参照ください。
▼おすすめのトレーニングベンチ
【おすすめのトレーニングベンチ】折りたたみ・フラット・インクライン
■ダンベルトレーニングにおすすめの筋トレグッズ
●リストラップ・パワーグリップ・トレーニングベルト
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●ダンベルトレーニングの長所と短所
ダンベル筋トレは複数の筋肉を同時に高重量で鍛えるコンパウンド種目から、個別の筋肉をじっくり鍛えるアイソレーション種目まで種目数が豊富で、自宅筋トレでは中心となるトレーニング法です。また、バーベル筋トレよりも可動域が広くとれるというのも大きな長所です。
逆に、片手でウエイトを保持するため安定が悪く、バーベルやマシンでの筋トレに比べると高重量が扱いにくくなります。また、ダンベルやベンチ類など器具をそろえる必要もあります。
しかしながら、自宅で筋肥大バルクアップしようと思えば、やはりダンベルトレーニングの一択ではあります。
なお、他のダンベルトレーニングメニューについては、下記の種目別解説記事をご参照ください。
■ダンベルトレーニング全種目一覧
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執筆者情報
上岡岳
アームレスリング元日本代表
ジムトレーナー・生物学学芸員
JAWA日本アームレスリング連盟常任理事|レフリー委員長・広報広報部長
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