自宅でできるバルクアップ向きの大胸筋の鍛え方を、上部・下部・内側の部位別に自重トレーニング・チューブトレーニング・ダンベル筋トレから厳選して動画をまじえて解説します。
目次
■大胸筋の構造と作用
●上部・下部・内側に分けられる
胸の筋肉・大胸筋は、上部・下部・内側に分けられ、腕を前面に押し出すとともに腕を前方で閉じる作用があります。その部位別の作用は以下の通りです。
・大胸筋上部:腕を斜め上方に押し出す
・大胸筋下部:腕を斜め下方に押し出す
・大胸筋内側:腕を体幹前面で閉じる
・大胸筋外側:腕が開いた上体から閉じる
大胸筋は、肩の筋肉・三角筋および腕の筋肉・上腕三頭筋と共働して上半身の押す動きを行います。
また、大胸筋外側深層にある小胸筋、大胸筋周辺肋骨に接合する前鋸筋も共働筋です。
■大胸筋の筋トレの負荷回数設定
●まずは1セット15回で慣れれば8回
筋トレで鍛える骨格筋を構成している筋繊維には以下の三種類があり、それぞれの特徴は次の通りです。
①速筋繊維TYPE2b
約10秒前後の短い時間に爆発的・瞬発的な収縮をする特徴があり、トレーニングにより強く筋肥大します。10回前後の反復回数で限界がくる重量設定で鍛えます。
②速筋繊維TYPE2a
10~60秒ほどのやや長時間で瞬発的な収縮をする特徴があり、トレーニングによりやや筋肥大します。15回前後の反復回数で限界がくる重量設定で鍛えます。
③遅筋繊維TYPE1
60秒以上数分・数時間の持続的・持久的な収縮をする特徴があり、トレーニングにより筋肥大せずに引き締まります。20回以上の反復回数で限界がくる重量設定で鍛えます。
つまり、筋肥大バルクアップ目的なら①、細マッチョ筋トレや女性の部分ボリュームアップ目的なら②、減量引き締めダイエット目的なら③、の負荷回数設定で筋トレを行っていきます。ただし、腹筋郡・前腕筋郡・下腿三頭筋など日常での使用頻度が高い部位は、基本的に20回以上高反復回数で鍛えます。
■大胸筋を効率的に強化するためのコツ
●拮抗筋の僧帽筋もしっかりとトレーニングする
筋肉は必ず逆の作用をする筋肉(拮抗筋)と対になって存在しており、その片側の発達が遅れていると対の筋肉も発達しにくくなります。
大胸筋の拮抗筋は背中の筋肉・僧帽筋ですので、大胸筋下部のトレーニングばかりするのではなく、僧帽筋もしっかりと鍛えていくことが「急がば回れ」で非常に有効です。
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■自宅での大胸筋全体の筋トレメニュー
●腕立て伏せ
大胸筋トレーニングの基本中の基本で、大胸筋全体に効果のあるのが腕立て伏せです。手を肩幅よりやや広く構え、背すじを伸ばして動作するのがポイントです。
●チューブチェストプレス
チューブチェストプレスは、大胸筋を中心として、三頭筋や上腕三頭筋といった上半身の押す作用の筋肉全体に効果があります。
チューブチェストプレスは、腕を押し出す角度によって効果のある部位が変化しますが、それは次の通りです。
・斜め上に押し出す:大胸筋上部
・斜め下に押し出す:大胸筋下部
・正面に押し出す:大胸筋全体
また、腕を押しきった位置で腕を閉じる動作をくわえることで、大胸筋内側にも効果があります。
●ダンベルプレス
ダンベルプレスは、大胸筋全体に効果があります。また、二次的に三角筋と上腕三頭筋にも効果的です。
ダンベルプレスは、常に手首の真下に肘がくるように動作するのが、効率的に大胸筋に負荷をかけるポイントです。この位置関係がずれてしまうと負荷が三角筋や腕に逃げてしまいます。
また、構えるときは肩甲骨を寄せ軽くブリッジを組み、肩甲骨のトップ二箇所と臀部の合計三点で身体を支えるようにします。
ダンベルプレスは、肩関節よりも頭側にダンベルを下ろすと肩関節を怪我しますので注意してください。また、できるだけ深くダンベルを下ろすことが重要で、浅いダンベルプレスはダンベルトレーニング最大のメリットである「可動域が広く筋肉を最大伸展できる」ということを活用できていないということになりますので、可能なかぎり深くダンベルを下ろしてください。
●ダンベルフロアープレス
トレーニングベンチがない環境では、ダンベルプレスを床で行うフロアーダンベルプレスが有効で、本種目は大胸筋全体効果があり、初心者の方におすすめの種目です。ダンベルを押し上げたポジションで、腕をやや閉じる動作を加えることで大胸筋が完全収縮して効果が倍増します。
ただし、ダンベルプレスの最大のメリットである「大胸筋を最大伸展させる」ことができませんので、できればトレーニングベンチを用意したいものです。
●ダンベルフライプレス
こちらが、ダンベルフライプレスの模範的な動画で、肘は直角程度に固定して行います。
ダンベルフライのように腕を広げつつダンベルを下ろし、そこから「腕を閉じる」意識ではなく「ダンベルをそのまま上へ押し上げる」軌道で動作を行います。
ダンベルプレスやダンベルフライと注意点は共通で、まずは肩関節への開き負荷を防ぐため、ダンベルは肩のラインよりもヘソ側で動作します。また、肩甲骨を寄せていないと肩から初動してしまい、肩関節に強い負担がかかりますので、セット中は常に肩甲骨を寄せておきことに注意してください。
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■自宅での大胸筋上部の筋トレメニュー
●足上げ腕立て伏せ
初心者の方には、やや強度の高い自重トレーニングですが、足上げ腕立て伏せ=デクラインプッシュアップは、腕を押し出す軌道が斜め上方になるため大胸筋上部に効果的なトレーニング方法です。
●膝上げ膝つき腕立て伏せ
足上げ腕立て伏せはかなり高強度の自重トレーニングですので、筋力的に行うのが難しい方は、この動画のような膝上げ膝つき腕立て伏せを行うことをおすすめします。
●パイクプッシュアップ
パイクプッシュアップは大きく腰を曲げた状態で腕立て伏せの動作を行いますが、三角筋に効果がある軌道、すなわち上方へ腕を押し出す軌道で行うことがポイントです。
また、肘が体幹よりも後ろ(背面側)になるフォームだと、肩関節を痛めるリスクがありますので、かならず肘は体幹よりも前側にするようにしてください。
こちらのパイクプッシュアップは、足上げパイクプッシュアップと呼ばれるのもので、通常のパイクプッシュアップよりも強い負荷を大胸筋上部にかけることができます。
●チューブインクラインチェストプレス
斜め上方に腕を押し上げるチューブインクラインチェストプレスは、大胸筋上部に効果の高いチューブトレーニングで、仕上げトレーニングとしても最適です。
●リバースダンベルプレス
ダンベルを通常とは逆向きに保持して行うリバースダンベルプレスは、大胸筋上部効果の高いダンベル筋トレです。ベンチ類がない場合は床で行っても問題ありません。
また、インクラインベンチなどの専用器具がなくても、こちらのようなソファーを流用したダンベルプレスを行うと大胸筋上部を鍛えることが可能です。
●インクラインダンベルプレス
インクラインダンベルプレスは、大胸筋のなかでも上部に効果があります。また、二次的に三角筋と上腕三頭筋にも効果的です。
この種目は、斜め上方への軌道により大胸筋上部に効果の高いトレーニングですが、セット終盤で苦しくなって腰を浮かせてしまうと、その軌道が通常のダンベルプレスと変わらなくなりますので、最後まで腰をベンチにつけて動作を行ってください。
●インクラインダンベルフライ
インクラインダンベルフライは、大胸筋の上部内側を鍛えるのに効果的なダンベルトレーニングです。ポイントはフィニッシュポジションでダンベルを押し上げる意識をして大胸筋を最大収縮させることです。また、この時にやや顎を引くようにするとさらに効果は高まります。
■自宅での大胸筋下部の筋トレメニュー
●ディップス
ディップスは高負荷の大胸筋下部自重トレーニングです。
身体を下ろす時に、やや前傾姿勢で行うのがポイントです。また、肘をあまり開くと、大胸筋ではなく上腕三頭筋に大きく負荷が逃げてしまうので注意してください。
こちらの動画のように椅子を二つ用いて行うことも可能です。できるだけ肘をしめ、やや顎を引き下を見ながら動作するのがポイントです。
●ベンチディップス
ディップスはかなり高強度の自重トレーニングですので、筋力的に行うのが難しい方には、こちらの動画のようなベンチディップスがおすすめです。
椅子を使って行い、必要に応じて足の力も補助に使用して動作をします。ポイントは肘をできるだけ閉じて(脇をしめて)行うことです。
●斜め腕立て伏せ
斜め腕立て伏せ(インクラインプッシュアップ)は、腕を押し出す軌道が斜め下方になるため、大胸筋下部に負荷が集中するトレーニング方法です。また、ディップス系種目に比べ、強度が低いため初心者の方にもおすすめの方法です。
背すじを真っ直ぐに保ったまま行うことが大切なポイントで、腰が曲がったフォームになるとせっかくの下方への軌道が失われますので注意してください。
●チューブデクラインチェストプレス
斜め下方に腕を押し出す軌道のチューブデクラインチェストプレスは、大胸筋下部の仕上げトレーニングとしておすすめの種目です。
●膝立てダンベルフロアープレス
大胸筋下部に効果のあるダンベル筋トレ種目が膝立てダンベルプレスです。動画ではベンチ上で行っていますが、床で行っても効果があります(ただし、可動範囲はやや狭くなります)。
●デクラインダンベルプレス
デクラインダンベルプレスは、大胸筋のなかでも下部に効果があります。また、二次的に三角筋と上腕三頭筋にも効果的です。
本種目は、斜め下方への軌道により大胸筋下部に効果の高いトレーニングですが、インクラインと違いセット終盤で腰を浮かせてセルフ補助をしても、さらに大胸筋下部に効果的な斜め下方軌道が強まるので、最後に腰を浮かせて動作をするのも間違いではありません。
●デクラインダンベルフライ
こちらが、ダンベルデクラインフライの模範的な動画です。ダンベルデクラインフライは、構える向きとして、上半身が斜め下方になりますので、意識を怠るとダンベルを肩のラインより頭側に下ろしてしまいます。
本種目を行うにあたり、肩のラインよりもヘソ側にダンベルを下ろすことが、肩関節に開き負荷を与えないために重要です。
また、肩甲骨をしっかりと寄せたまま動作することも大切で、肩甲骨の寄せが甘いと、肩から初動してしまい、肩関節に大きな負担になりますので十分に注意してください。
①デクラインベンチに仰向けになり、肩甲骨を寄せ、ダンベルを胸の上でグリップして構える
②肩甲骨を寄せたまま、ダンベルを押し上げる
③ダンベルを押し上げたら、肘をしっかりと伸ばし、顎をやや引いて大胸筋と上腕三頭筋を完全収縮させる
④ダンベルのウエイトに耐えながら、筋肉に負荷をかけながら元に戻る
■自宅での大胸筋内側の筋トレメニュー
●ダイヤモンド腕立て伏せ
大胸筋の内側に効果的な自重トレーニングが、親指と人差し指で菱形を作って行うダイヤモンド腕立て伏せです。この手の形を作らずに床に手をついて腕立て伏せを行うと、手首を痛める可能性がありますので注意してください。
●チューブチェストフライ
チューブチェストフライは、大胸筋内側を効果的に鍛えることのできるトレーニング方法です。腕を閉じた後にやや前方に押し出す動作を加えることで、大胸筋内側が完全収縮します。
●ダンベルフロアーフライ
床で行うダンベルフロアーフライは、大胸筋内側に効果のあるトレーニング方法です。こちらも腕を閉じた後に、やや上方にダンベルを押し出すことで大胸筋内側が完全収縮し、効果が倍増します。
ただし、本種目はダンベルフライ最大のメリットである「大胸筋を最大伸展させる」ことができませんので、できればトレーニングベンチを用意し、通常のダンベルフライを行うことをおすすめします。
●ダンベルフライ
こちらが理想的なダンベルフライのフォームの動画です。やや肘を曲げ、可能な限りダンベルを下ろします。
次に大胸筋を意識しながら肘はやや曲げたまま腕を閉じていきます。この時に、やや顎を引くことも意識してください。
腕を閉じきったフィニッシュポジションになったら、ここではじめて肘を伸ばし、大胸筋を絞るようなイメージでダンベルを押し上げ、大胸筋を完全収縮させます。
そして、再びやや肘を曲げダンベルを下ろしていきます。なお、ダンベルの保持方向は縦(背骨と平行)と横(腕と平行)の二種類があり、やや刺激が異なるので、縦持ちのセットと横持ちのセットをそれぞれ行うとよいでしょう。
【本種目のやり方とコツ】
①ベンチに仰向けになり、肩甲骨を寄せ、肘を伸ばして胸の上でダンベルを構える
②肩甲骨を寄せたまま、肘を曲げずに腕を開き、ダンベルをできるだけ深く下ろす
③ダンベルを下ろしたら、肩甲骨を寄せたまま同じ軌道で腕を閉じる
④腕を閉じたら、ダンベルを少し押し上げながら顎をやや引いて大胸筋を完全収縮させる
■部位別の自宅筋トレ
大胸筋の自宅トレーニング
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三角筋の自宅トレーニング
上腕三頭筋の自宅トレーニング
上腕二頭筋の自宅トレーニング
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執筆者情報
上岡岳
アームレスリング元日本代表
ジムトレーナー・生物学学芸員
JAWA日本アームレスリング連盟常任理事|レフリー委員長・広報広報部長
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