腹筋群の鍛え方を、その部位別(腹直筋・腹斜筋|内腹斜筋・外腹斜筋)に各筋トレ方法(自重・チューブダンベル・マシン)から詳しく解説します。
目次
■腹筋群の構造と作用
●体幹を屈曲および回旋させる作用
読みかた:ふっきんぐん
英語名称:abdominal muscles
部位詳細:腹直筋|外腹斜筋|内腹斜筋|腹横筋
起始:恥骨稜・恥骨結合・恥骨結節|第5~12肋骨外面|胸腰筋膜深葉・上前腸骨棘・鼡径靭帯・腸骨稜|第7~12肋軟骨内面・鼡頚靭帯・上前腸骨棘
停止:剣状突起・第5~7肋軟骨外面|鼡径靭帯・腹直筋鞘前葉・腸骨稜外唇|第10~12肋骨下縁・腹直筋鞘・精巣挙筋|剣状突起・白線・恥骨
体幹前面の筋肉・腹筋群は、深層から順に腹横筋・内腹斜筋・外腹斜筋・腹直筋の四層構造をしており、体幹を屈曲および回旋させる作用があります。その部位別の作用は以下の通りです。
・腹横筋:腹圧を維持する
・内腹斜筋:外腹斜筋を補助する
・外腹斜筋:体幹を回旋させる
・腹直筋:体幹を屈曲させる
腹筋群は、体幹屈曲時には股関節の筋肉・腸腰筋と共働するとともに、体幹回旋時には腰の筋肉・回旋筋と対角線に共働・拮抗して作用します。
▼さらに詳しい筋肉の構造と作用
【筋肉の名前と作用の完全図鑑】筋トレ部位の名称と共働筋・拮抗筋|その鍛え方
■筋力トレーニングの種類
筋力トレーニング(レジスタンス運動)には以下のような種類があります。
●自重ウエイトトレーニング
・自重トレーニング(自宅向き)
・体幹トレーニング(自宅向き)
・自重体幹トレーニング(自宅向き)
●レジスタンストレーニング
・チューブトレーニング(自宅向き)
●フリーウエイトトレーニング
・ダンベルトレーニング(自宅向き)
・バーベルトレーニング(ジム向き)
・ケトルベルトレーニング(ジム向き)
●マシンウエイトトレーニング
・ケーブルマシントレーニング(ジム向き)
・スミスマシントレーニング(ジム向き)
・専用マシントレーニング(ジム向き)
■筋トレ目的別の重量・回数設定
筋トレで鍛える骨格筋を構成している筋繊維には以下の三種類があり、それぞれの特徴は次の通りです。
①速筋繊維TYPE2b
約10秒前後の短い時間に爆発的・瞬発的な収縮をする特徴があり、トレーニングにより強く筋肥大します。10回前後の反復回数で限界がくる重量設定で鍛えます。
②速筋繊維TYPE2a
10~60秒ほどのやや長時間で瞬発的な収縮をする特徴があり、トレーニングによりやや筋肥大します。15回前後の反復回数で限界がくる重量設定で鍛えます。
③遅筋繊維TYPE1
60秒以上数分・数時間の持続的・持久的な収縮をする特徴があり、トレーニングにより筋肥大せずに引き締まります。20回以上の反復回数で限界がくる重量設定で鍛えます。
つまり、筋肥大バルクアップ目的なら①、細マッチョ筋トレや女性の部分ボリュームアップ目的なら②、減量引き締めダイエット目的なら③、の負荷回数設定で筋トレを行っていきます。ただし、腹筋郡・前腕筋郡・下腿三頭筋など日常での使用頻度が高い部位は、基本的に20回以上高反復回数で鍛えます。
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■腹筋群の自重トレーニング
●フロントプランク
腹筋トレーニングのアップとしてもおすすめな体幹トレーニングがフロントプランクで、こちらの動画が、もっともスタンダードなフロントプランクのやり方になり、肘をついて背すじを伸ばした状態で静止します。
動作で大切なポイントは四つあり、それは次の通りです。
①腰を曲げない
腰を曲げて突き出したスタイルでフロントプランクを行うと、負荷の大半は肝心の体幹部分に加わらず、腕や脚に負荷が逃げてしまいます。あくまでも体幹トレーニングですので、しっかりと背すじを真っ直ぐに伸ばし、腹筋群や脊柱起立筋に効かせるようにしてください。
②お腹を突き出さない
逆に、お腹を突き出したスタイルでのフロントプランクも、負荷の多くが腕や脚に逃げてしまう上、腰が反った状態になるため腰椎に対して負担となり、腰痛の原因となってしまうことも少なくありません。お腹を突き出さないと姿勢を維持できなくなった場合は、セットを中止し、少し休憩してから再びセットを行なうことをおすすめします。
③肩の真下に肘を置く
フロントプランクは腕を鍛えるトレーニングではありませんので、できるだけ腕の筋力に頼らないように、肩の真下に肘を置き、上半身の体重は筋力ではなく上腕骨で垂直に支えるようにしてください。
④前を見て姿勢を維持する
フロントプランクのセット終盤になってくると、どうしても苦しくなって下を向いて顎を引きがちですが、フロントプランクで姿勢を支える背筋群=脊柱起立筋と顎の連動性は「顎を上げると背筋が収縮する」です。
下を向いて顎を引いてしまうと、脊柱起立筋は弛緩しがちで余計に姿勢を維持しにくくなりますので、前を見ることで顎を上げて姿勢を維持することが大切なポイントです。
●クランチ
クランチは、腹筋群のなかでも腹直筋に効果があります。特に腹直筋上部に効果的な種目です。
反動を使い腰が反るようなフォームで行うと腰痛の原因になりますので注意が必要です。
息を吐きながら上半身を起こしていき、起こしきった位置で顎を引いて息を吐ききることで腹直筋が完全収縮させるのがポイントです。
●レッグレイズ
レッグレイズは、腹筋群のなかでも腹直筋下部に高い効果があります。
反動を使い腰が反るようなフォームで行うと腰痛の原因になりますので注意してください。また、セット中は床に足をつけないことも大切なポイントです。
●リバースクランチ
リバースクランチは腹筋群のなかでも腹直筋に、特に腹直筋下部に効果があります。
レッグレッグが足を上げて腹直筋を収縮させるのに対し、腰を浮かせる動作で腹直筋を収縮させるのが特徴です。
このため、足をあまり動かす必要がないことが特徴で、腹筋運動が苦手な方でも取り組みやすい種目です。
●クランチツイスト
クランチツイストは腹筋群のなかでも腹斜筋に効果があります。また、二次的に腹直筋にも効果的です。
できるだけ大きな捻り運動を行い、腹斜筋を最大伸展・最大収縮させるのがポイントです。
また、腹筋運動が苦手な方は、一回の起き上がりに対して片側一回の捻りにとどめ、強度を下げて行ってください。
ピラミッドセット法|ドロップセット法|アセンディングセット法|ディセンディングセット法|フォースドレップ法|レストポーズ法|パーシャルレップ法|チーティング法|スーパーセット法|コンパウンドセット法|トライセット法|ジャイアントセット法|予備疲労法|部位分割法
■腹筋群のチューブトレーニング
●チューブクランチ
チューブクランチは、腹筋群のなかでも腹直筋上部に効果があります。
息を吐きながら身体を曲げていき、最後に息を吐ききって腹直筋を最大収縮させるのがポイントです。
また、この時に顎を引くと腹直筋が完全収縮して効果的です。
●チューブレッグレイズ
チューブレッグレイズは、腹筋群のなかでも腹直筋下部に効果があります。
足を上げすぎず45度程度で動作をするとともに、セット中は足を床にもつけずに負荷を腹直筋にかけ続けることがポイントです。
●チューブサイドベント
チューブサイドベントは動作が比較的簡単で、なおかつ腹斜筋に対して効果の高いトレーニング方法です。大きな動作を心がけ、腹斜筋を最大伸展・最大収縮させることがポイントです。
■腹筋群のダンベルトレーニング
●ダンベルクランチ
腹直筋上部に効果の高いダンベルトレーニングとしておすすめなのがダンベルクランチです。動画のようにダンベルを高く差上げることを意識して行うとよく効きます。
ダンベルクランチにはいくつかの方法があり、こちらの動画のような方法も効果的なやり方です。いずれの場合も、反動は使わず、腹直筋上部を意識しながら「じわりと効かせる」のがコツになります。
●ダンベルレッグレイズ
腹直筋下部のダンベルトレーニングとしてスタンダードなものが、こちらの動画のようなダンベルレッグレイズです。注意点は、刺激を逃がさないためにセット中は足を床につけないこと、腰椎の損傷を防ぐために腰を浮かせない(ブリッジを作らない)ことです。
●ダンベルサイドベント
ダンベルを使った腹斜筋トレーニングの基本とも言えるのがダンベルサイドベンドです。反動を使わず、体幹を真横に屈曲していき、戻るときは直立よりもやや反対側まで戻ることで腹斜筋が最大伸展・最大収縮します。
●ダンベルトゥタッチクランチ
腹斜筋のダンベルトレーニングのなかでも高い強度のある種目がダンベルトゥータッチクランチです。片手でダンベルを高く保持し、対角線の足をタッチしにいきます。
■腹筋群のマシントレーニング
●マシンクランチ
体幹前面の腹筋群を鍛える基本種目がマシンクランチです。身体を曲げながら息を吐き、曲げきったポジションで息を吐ききり顎を引くことで腹筋群が最大収縮し、筋トレ効果が最大に高まります。
なお、反動を使って行うと腰椎に負担となりますので、折り返し点では一回一回確実に動作をとめるようにしてください。
●ケーブルクランチ
ケーブルクランチは、腹筋が完全収縮するポジションまで強いウエイト負荷がかかり続けるので、とても効率的な腹筋トレーニングです。
●トルソーツイスト
腹筋群のなかでも内腹斜筋と外腹斜筋に効果的なのがトルソーツイストです。この種目も、反動を使わずにしっかりと往復動作をして効かせることが大切なポイントです。
●レッグリフト
厳密にはマシン筋トレではなく、専用の器具を使った自重トレーニングですが、腸腰筋群や腹筋下部に効果が高くおすすめな種目がレッグリフトです。脚を下ろす時もコントロールして効かせるようにしましょう。
なお、足は床と並行以上に上げてもあまり効果はなく、逆に反動を使わずに足を床と並行位置で一旦止めることで負荷が倍増します。
■筋トレ効果を高める食事メニュー
●栄養面の管理はトレーニングと同様に重要な要素
初心者の方にありがちなのが、トレーニング自体をするだけで満足してしまい、トレーニングと同等に重要な栄養面の管理を怠ってしまうことです。いくら筋トレを頑張っても、食事や栄養管理をしないとほとんど効果がありません。
まず、筋トレをして筋肥大するためには体重あたり2gの純タンパク質が必要とされています(引き締めやダイエットの場合は1~1.5g)。つまり、70kgの人の場合、一日に140gの純タンパク質(肉類に換算して700g)とかなり多く、筆者のジムでは、この量を摂りきれていないために筋肥大が停滞していると思われる初心者会員も少なくありません。
また、タンパク質を一度に吸収できる量は純タンパク質で約30g(肉類換算で150g)と一般的に言われており、一日三度の食事では筋肥大に必要なタンパク質量をまかないきれませんので、間食を加えて一日五食ほどにするようにしましょう。
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執筆者情報
上岡岳
アームレスリング元日本代表
ジムトレーナー・生物学学芸員
JAWA日本アームレスリング連盟常任理事|レフリー委員長・広報広報部長
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