前腕筋群は各種の腕・手を使うスポーツの競技能力に大きく影響する筋肉で、球技・格闘技・腕相撲などのパフォーマンスに非常に重要な部位です。
その鍛え方・自宅筋トレ方法を「前腕のスポーツ」とも呼ばれるアームレスリング元日本代表が詳しく解説します。
【アームレスリング主戦績】
全日本マスターズ80kg超級2位
アジア選手権マスターズ90kg級3位
■前腕筋群の機能
前腕筋群は20近い筋肉から構成される筋肉群で、主に手首関節の動作を担っており、その機能は「屈曲」「伸展」「内転」「外転」「回内」「回外」と複雑で、これに加えて手の開閉にも関わっています。
■前腕筋群の構造と作用
●前腕屈筋群と前腕伸筋群に分けられる
前腕筋群は、大きくは前腕屈筋群と前腕伸筋群に分けられます。それぞれの特徴は以下の通りです。
・前腕屈筋群
・円回内筋(musculus pronator teres)
・橈側手根屈筋(musculus flexor carpi radialis)
・長掌筋(musculus palmaris longus)
・尺側手根屈筋(musculus flexor carpi ulnaris)
・浅指屈筋(musculus flexor digitorum superficialis)
・深指屈筋(musculus flexor digitorum profundus)
・長母指屈筋(musculus flexor pollicis longus)
・方形回内筋(musculus pronator quadratus)
・前腕伸筋群
前腕伸筋群は前腕部外側に位置する筋肉群で、「手首を伸展させる」働きがあり、以下の筋肉で構成されています。
手首を巻き込み腕を引き寄せる動作に連動するため、腕相撲はもちろん、組み技系格闘技などで重要な筋肉です。
・腕橈骨筋(musculus brachioradialis)
・長橈側手根伸筋(musculus extensor carpi radialis longus)
・短橈側手根伸筋(musculus extensor carpi radialis brevis)
・回外筋(musculus supinator)
・尺側手根伸筋(musculus extensor carpi ulnaris)
・総指伸筋(musculus extensor digitorum)
・小指伸筋(musculus extensor digiti minimi)
・示指伸筋(musculus extensor indicis)
・長母指伸筋(musculus extensor pollicis longus)
・短母指伸筋(musculus extensor pollicis brevis)
・長母指外転筋(musculus abductor pollicis longus)
なかでも、腕橈骨筋(わんとうこつきん)は前腕伸筋群だけでなく前腕筋のなかでも最大の筋肉で、手首を縦方向に動かす・維持する動きの主働筋となり、バット・ラケット・竹刀などスポーツ器具を強く動かすために最重要の筋肉と言えます。
執筆者の行うスポーツ競技である腕相撲・アームレスリングにおいても「ヘッドの力」と呼ばれ非常に重要な部位です。
一般的には「前腕伸筋群を鍛える」≒「腕橈骨筋を鍛える」なので、本記事でもそれに準じて記載していきます。
■前腕筋群を鍛える負荷・回数設定
●20~30回以上の高反復回数で鍛える
前腕筋群は、全身の筋肉のなかでもトップクラスに日常での使用頻度が高い部位です。また、筋繊維組成も持久筋繊維が多くなっています。
このため、他の筋肉部位の筋トレのように、高負荷低回数の筋トレではあまり発達しません。
最低でも20回、できれば30回以上、可能ならば100回程度の高反復回数で鍛えていくのが理想です。
●腕橈骨筋にはアイソメトリックス筋トレも重要
腕橈骨筋をはじめとした前腕伸筋群が収縮した状態=「手首が反った状態」でスポーツ競技を行うシチュエーションはあまり多くありません。
スポーツ競技において現実的には、前腕伸筋群は「手首の固定を維持する筋力」として働きます。ですので、積極的に前腕を伸展させるトレーニングというよりは、肘と手首を固定したまま負荷に耐えるアイソメトリックス筋トレのほうが実戦的な筋力が培われます。
■前腕筋トレーニングの頻度
前腕筋群は全身の筋肉のなかでもっとも回復速度が速い筋肉部位ですので、一日数回・毎日トレーニングを行っても問題なく、むしろ、そのような高頻度で行うほうが成果が早く出ます。
ただし、トレーニングになれないうちは筋肉痛ではなく、関節に痛みを覚える場合もありますので、その場合は数日間の休養をとってください。
なお、執筆者の親交のあるアームレスリング世界チャンピオンに前腕トレーニングの頻度を聞いたことがありますが、その選手は「休日にレンタル映画を数本借りて、それを観ながら朝から晩まで前腕トレーニングをしている」とのことです。

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■前腕屈筋群の鍛え方
●ダンベルリストカール
前腕屈筋群を鍛えるもっともスタンダードな筋トレ方法がダンベルリストカールです。
ダンベルリストカールは、バーベルリストカールなどのように軌道を角度固定され両手を同時に動かすのではなく、フレキシブルに角度を変えて片手ずつ行うため、前腕屈筋群をまんべなく鍛えられる点で遥かに優れています。
なお、手首を伸ばしてから、ダンベルシャフトを指の第一関節で固定して、やや手を開くような動作で最大伸展させてから収縮させることで、飛躍的に効果が向上します。
リストカールの効率を上げるために有効なのが、こちらのオーバルグリップと呼ばれるグリップアタッチメントです。
負荷の重心と握りの中心がオフセットされる構造をしているため、強い負荷を前腕屈筋群に加えることが可能です。
オーバルグリップの詳細
●リストスピネイション
前腕屈筋群の重要な作用に、手首の回内回旋がありますが、それを鍛えるのに一般的なダンベルトレーニング方法が、動画のようなリストスピネイションです。
筆者をはじめ多くのアームレスリング選手は、このような帯やロープとウエイトを使ったリストスピネイションを行っています。
ダンベルリストスピネイションよりも、より高重量高負荷で前腕の回内回旋力を鍛えることが可能です。
リストスピネーションやリストプロネーションを効果的にするための専用器具には以下のようなものがあります。
●ハンドグリッパー
前腕屈筋群の作用に一つに、手を握る動作の補助もあります。つまり、前腕屈筋群は握力にも大きく影響します。
握力を鍛えるのに最適な方法が、図のようなハンドグリッパーです。
筆者も職場のキーホルダーとしてハンドグリッパーを使用しており、ちょっとした隙間時間に高頻度で握力を鍛えています。
なお、ハンドグリッパーを通常の向きで使用すると、握力のなかでも主にクラッシュ力(握る込む力)が鍛えられますが、腕相撲・アームレスリングだけでなく多くのスポーツ種目ではピンチ力=「つまむ力」も重要になります。
ハンドグリッパーでピンチ力を鍛える場合は、図のようにハンドグリッパーを上下逆に握って行ってください。
こちらのようなスーパーグリッパーは、握力が強くなっていってもバネの位置を付け替えるだけで負荷を強くすることができます。
負荷固定式のハンドグリッパーと違い、買い替える必要がないためリーズナブルです。

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■前腕伸筋群・腕橈骨筋の鍛え方
●ダンベルリバースリストカール
腕橈骨筋をはじめとした前腕伸筋群を鍛える一般的なトレーニング方法が、動画のようなリバースグリップダンベルリストカールです。
なお、手首が一直線よりも下へ手首を屈曲させてもあまり前腕伸筋群には効果がありませんので、手首が直線になったら折り返し、手首を反らせる(伸展させる)動作を繰り返すと効率的です。
●リストローラー
リストローラーは通常の筋トレでは得ることのできない負荷を前腕伸筋群に加えることのできるトレーニング方法です。
こちらも、過度に手首を屈曲させないようにして行ったほうが前腕伸筋群を効率的に鍛えることができます。
●リストハンマー
腕橈骨筋を鍛えるのに最適なトレーニング方法の一つが、こちらのようなリストハンマーです。グリップにテーピングなどを巻き、握りにくくするとよりスポーツ競技で実戦的な筋力が培われます。
こちらのようなバーチカルバーは、リストハンマー専用のシャフトで、効果的に負荷を加えられるようにシャフトが曲げられた構造をしています。
●アイソーレーション懸垂
身体を引き上げた状態で停止し、ひたすら姿勢を維持するアイソメトリックス懸垂は、腕橈骨筋に爆発的な効果があります。
まずは10秒程度からはじめ、少しずつ停止時間を伸ばしていき、最終的には1~2分の静止を1セットにできるようにしてください。
●ファットグリップで自然と前腕を鍛える
ファットグリップは、前腕や握力のトレーニンググッズとして世界的に有名なグリップアタッチメントです。普段のトレーニングにファットグリップを使うことで、自然と前腕の筋力や握力が向上しています。
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執筆者情報
上岡岳
アームレスリング元日本代表
ジムトレーナー・生物学学芸員
JAWA日本アームレスリング連盟常任理事|レフリー委員長・広報広報部長
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