バーベルベンチプレスの種類・バリエーションと筋肉に効果的なやり方・重量負荷設定について解説します。また、標準的な初心者の男性が100kg挙上に達するまでの平均的な期間や、そのために効率的なプログラムの組み方について解説します。
目次
■バーベルベンチプレスが効果のある筋肉は?
●バーベルベンチプレスは大胸筋・三角筋・上腕三頭筋に効果的
バーベルベンチプレスは上半身の押す動作の筋肉、つまり大胸筋・三角筋・上腕三頭筋に対して効果的で、バリエーションによって負荷のかかる筋肉部位が少しずつ異なります。
■バーベルベンチプレスのやり方と効果的なフォーム
こちらがバーベルベンチプレスの動画です。まず、ベンチに仰向けになり、肩甲骨をしっかりと寄せて構えます。軽くブリッジを作り、肩甲骨2点とお尻のあわせて3点で上半身を支え、さらに足を踏ん張って計5点で全身を支えます。
ラックからバーベルを外したら、肩甲骨の寄せが緩まないように気をつけながらみぞおちの真上までバーベルを移動させ、そこから筋力でコントロールしながら下ろしていきます。
胸にバーベルシャフトがついたらバーベルを押し上げますが、この時に肩甲骨を寄せたまま押し始めることに意識を集中してください。
この意識ができていないと、肩から先行して動くフォームになってしまい、肩関節に大きな負荷がかかるので注意が必要です。
トレーニングとしてバーベルベンチを行う場合には、完全に肘が伸びるポジションまでバーベルを押し上げる必要はなく、やや肘が曲がり筋肉に対する負荷が抜けない位置(肘を伸ばしてロックしない位置)で折り返すようにします。
なお、一般的な筋トレでは「力を入れながら息を吐く」ことが基本ですが、バーベルベンチプレスにおいては息を吸い込んだまま呼吸を止めて、胸郭を広げて行う呼吸方法がやりやすいでしょう。
【本種目のやり方とフォームのポイント】
①ベンチに仰向けになり、肩甲骨を寄せ、シャフトをグリップして構える
②バーベルをラックアウトしたら、そのまま水平に胸の真上まで移動させる
③筋力でコントロールしてシャフトを胸の上に下ろす
④肩甲骨をしっかりと寄せたままバーベルを押し上げる
⑤バーベルを押し上げたら、少し顎を引いて大胸筋を完全に収縮させる
■バーベルベンチプレスの動作注意点とポイント
バーベルベンチプレスでは、肩関節保護のため動作の間は常に肩甲骨を寄せる意識で行ってください。また、尻を浮かせると重い重量が挙がりますが、その癖がつくと、重量を追求するあまり、際限なく腰を浮かせてしまうことになりかねませんので、「尻は浮かせない」ことをご自身のなかのルールとして決めておくことをおすすめします。
また、少しでも重い重量を挙げたいあまり、胸の上でバーベルをバウンドさせている光景をたま見かけますが、これも際限なく強くバウンドさせる癖がついてしまい危険ですので、バウンドプレスは行わないようにしましょう。
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■バーベルベンチプレスの目的別の重量負荷設定
筋トレで鍛える骨格筋を構成している筋繊維には以下の三種類があり、それぞれの特徴は次の通りです。
①速筋繊維TYPE2b
約10秒前後の短い時間に爆発的・瞬発的な収縮をする特徴があり、トレーニングにより強く筋肥大します。10回前後の反復回数で限界がくる重量設定で鍛えます。
②速筋繊維TYPE2a
10~60秒ほどのやや長時間で瞬発的な収縮をする特徴があり、トレーニングによりやや筋肥大します。15回前後の反復回数で限界がくる重量設定で鍛えます。
③遅筋繊維TYPE1
60秒以上数分・数時間の持続的・持久的な収縮をする特徴があり、トレーニングにより筋肥大せずに筋密度が上がります。20回以上の反復回数で限界がくる重量設定で鍛えます。
つまり、筋肥大バルクアップ目的なら①、細マッチョ筋トレや女性の部分ボリュームアップ目的なら②、減量引き締めダイエット目的なら③、の負荷回数設定で筋トレを行っていきます。ただし、腹筋郡・前腕筋郡・下腿三頭筋など日常での使用頻度が高い部位は、基本的に20回以上高反復回数で鍛えます。
ピラミッドセット法|ドロップセット法|アセンディングセット法|ディセンディングセット法|フォースドレップ法|レストポーズ法|パーシャルレップ法|チーティング法|スーパーセット法|コンパウンドセット法|トライセット法|ジャイアントセット法|予備疲労法|部位分割法
■バーベルベンチプレスの種類やバリエーション
●インクラインバーベルベンチプレス
バーベルベンチプレスのなかでもインクラインベンチを用いて行うインクラインバーベルベンチプレスは、特に大胸筋上部に負荷のかかるバリエーションです。
セット中に苦しくなり、ついお尻を浮かせてしまいがちですが、お尻を浮かせてしまうと大胸筋上部に効果のある「斜め上に腕を押し出す軌道」が通常のフラットベンチプレスの軌道と大差なくなってしまうので、セット終了までしっかりと尻はベンチにつけるようにしてください。
●デクラインバーベルベンチプレス
デクラインバーベルベンチプレスは、デクラインベンチを用いて「腕を斜め下方に押し出す軌道」で行うベンチプレスのバリエーションで、大胸筋下部に強い負荷がかかります。
セット終盤でやや軽く尻を浮かせてセルフ補助をして追い込む方法もありますが、重量を追求するあまり、どこまでも尻を浮かせる癖がつきかねませんので、特に初心者の方は「尻を浮かせない」ことを決めてセットに臨むことをおすすめします。
●ワイドグリップバーベルベンチプレス
ワイドグリップバーベルベンチプレスは、通常のベンチプレスよりも拳一つ分ほど広くシャフトをグリップして行うバリエーションです。大胸筋の外側に強い負荷がかかり、ベンチプレスの初動での筋力を向上させるために有効です。
ワイドでグリップした場合、肩甲骨のロックが外れやすく、なおかつそのポジションでロックが外れると、非常に強い負担が肩関節に加わりますので、十分に注意してください。特にベンチプレスに慣れない初心者の方には、自重以上の重量でベンチプレスができるようになるまでは、あまりワイドグリップベンチプレスはおすすめしません。
●クローズグリップバーベルベンチプレス
クローズグリップバーベルベンチプレスは、通常の手幅よりも拳1~2つ分ほど狭いグリップで行うバリエーションで、上腕三頭筋に効果の高いやり方です。肘をやや開いて行うと上腕三頭筋短頭(外側)に、肘を閉じて行うと上腕三頭筋長頭(内側)に負荷がかかります。
また、必要以上にグリップを狭めると、手首関節に斜め方向の強い負荷がかかってしまいますので、もっとも手幅を狭めても肩幅までにとどめることをおすすめします。
なお、ジムにEZバーやトライセプスバーがある場合は、そちらを使用したほうが手首関節への負担はずいぶん少なくなります。
●リバースグリップバーベルベンチプレス
リバースグリップベンチプレスは、インクラインベンチがない環境で大胸筋上部に負荷を集中させられる逆手で行うバリエーションです。動作が不安定になりがちな種目ですので、基本的には補助者をつけるようにしてください。
また、逆手でシャフトをグリップしたままラックアウトすると、非常に危険です。補助者をつけるか、ノーマルグリップでラックアウトし、胸の上に一度シャフトを置きグリップを持ちかえるようにしてください。
●フロアーバーベルベンチプレス
ベンチ類がなく、バーベルセットだけある環境では、床に直接仰向けになりベンチプレスを行うフロアーベンチプレスで通常のベンチプレスと同様の効果を得ることができます。
実は下半身の力が全く使えないため、通常のベンチプレスよりも強度が高く、国内の格闘技関係では「寝差し」と呼ばれ、上半身の高負荷トレーニングとして行われています。
なお、力尽きたときに危険ですので、直径の十分ある20kgプレートを使うようにしてください。
■ベンチプレス100kg挙上を目指す
●ベンチプレス100kg挙上までにかかる期間
ベンチプレスの大きな壁となるのが100kgですが、全くの初心者の方が100kg挙上に到達するまでの期間はどれくらいでしょう?
これは、個人個人の資質や体型にもよりますが、筆者の運営するジムでは全くの初心者がベンチプレス100kgを挙げるようになるまでにかかる期間は3年です。先日も、実際に59kg級の所属選手が県大会において100kgの公式記録を残しましたが、その選手が壁を越えるまでに要した期間もちょうど3年でした。
筆者の運営するジムでは以下のように3つの時期に区切り、それを2ヶ月ずつローテーションする事で、年に2ローテーション、合計6ローテーションでベンチプレス100kgを突破するプログラムを組んでいます。
①筋肥大期:10回の反復で限界がくる重量でセットを組む
②筋力向上期:6~8回の反復で限界がくる重量でセットを組む
③神経強化期:6レップセット2週→5レップセット2週→4レップセット2週→3レップセット2週
もちろん、ベンチプレスに特化したパワーリフティングジムなどでは、さらにハードで効率的に強くなるメソッドもあり、それについては、下記の記事でパワーリフティング元全日本王者の方が詳しく解説していますので、そちらをご参照ください。
▼関連記事
【ベンチプレス100kgを挙げるやり方】フォームとメニューの組み方を元全日本王者が解説
■バーベルベンチプレスにおすすめの筋トレグッズ
●リストラップとパワーベルトがおすすめ
ベンチプレスはどうしても手首に強い負担がかかってしまいますので、リストラップはぜひとも使用したいアイテムです。また、高重量を目指す場合は、リストラップを利用したグリップ方法などもありますので、必須のギアと言えます。そして、入手するのであれば、普及品とは違い屈強なサポート力のあるリストラップを強くおすすめします。
腰を保護するだけでなく、腹圧を高め最大筋力を向上させてくれるトレーニングギアがトレーニングベルトです。バーベル筋トレにおいては、ほぼ必須のギアとも言えますので、ぜひ入手することをおすすめします。なお、トレーニングベルトはトレーニーにとって「筋トレの友」とも言える存在になってきます。はじめから安易なものを選ばずに、考えているよりもワンランク・ツーランク上のものを入手することがベルト選びの秘訣です。
■おすすめの記事
■バーベルトレーニングの基礎知識
●バーベルトレーニングの長所と短所
バーベルトレーニングは全てのウエイトトレーニングの基本となる筋トレ方法で、全身を高負荷で鍛えられ、なおかつ動作軌道のブレやズレを自身で支える必要があるため、体幹インナーマッスルも強くなるというメリットがあります。
このため、中級者~上級者には必須のトレーニング方法と言えます。反面、マシントレーニングのように軌道が決まっていないため、フォームや動作を習得するのには正確な指導を受け、慣れと経験が必要になります。
バルクアップ筋肥大・減量ダイエットいずれの目的の場合でも、いずれは習得したいトレーニング方法と言えます。
なお、他のバーベルトレーニングメニューについては、下記の種目別解説記事をご参照ください。
■バーベルトレーニング全種目一覧
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押す筋トレにはリストラップを
上半身の押す筋トレにぜひとも使用したいのが手首を保護するリストラップと呼ばれる筋トレグッズです。多くの初心者は、まだ手首を保持する力が弱く、腕立て伏せなども先に手首が痛くなってしまい完遂できないケースが少なくありません。リストラップを使えば、最後まで筋肉を追い込むことができ、とても効率的に身体を鍛えていくことが可能です。
▼おすすめのリストラップ
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【おすすめのリストラップ】初心者むけに使いやすい長さやリストストラップとの違いも解説
引く筋トレにはパワーグリップを
上半身の引く筋トレで初心者の方に多く見られるのが「先に握力がなくなって追い込めない」というケースです。筋トレは101%で行ってはじめて成果がでます。パワーグリップを使用して引くトレーニングの効率を上げることをおすすめします。
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本格的トレーニングには高耐荷重ラック+オリンピックバーベル
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執筆者情報
上岡岳
アームレスリング元日本代表
ジムトレーナー・生物学学芸員
JAWA日本アームレスリング連盟常任理事|レフリー委員長・広報広報部長
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