バーベルカールの種類・バリエーションごとの効果的なやり方と反動を使わないためにおすすめの器具をご紹介するとともに、筋トレ目的別に適切な重量・負荷・回数設定について解説します。
目次
■バーベルカールが効果のある筋肉は?
●バーベルカールは上腕二頭筋・上腕筋・前腕筋群に効果的
バーベルカールは上腕の前側に位置する力こぶの筋肉・上腕二頭筋を中心として、肘関節基部にある上腕筋および前腕筋群にも効果的です。
上腕二頭筋は内側の短頭と外側の長頭の二つの部位から構成されており、前者を鍛えると腕が体積が増加し、後者を鍛えると高さが発達しますが、上腕二頭筋は個人差が多い部位なので逆のケースの人もおり、まんべんなく鍛えていくことがベストです。
上腕筋は体積こそ小さな筋肉ですが、筋密度と収縮力の高い「半羽状筋」と呼ばれる筋繊維構造をしているので、腕力=肘の屈曲力という観点からは、上腕二頭筋以上に重要な部位です。
前腕筋群は20近い筋肉から構成されており、手首から先を屈曲・伸展・回外・回内・外転・内転および手を開閉する作用があり、非常に複雑ですが、バーベルカールでは主に手首を屈曲させる前腕屈筋群が鍛えられます。
■バーベルカールのやり方と効果的なフォーム
バーベルカールのなかでも基本中の基本と言えるバリエーションが、順手でグリップし立って行うバーベルスタンディングカールです。
手幅は肩幅よりもやや広くグリップし、背すじを伸ばし直立して構えます。そこから、上半身を反らせたり、反動を使ったりせずに肘を屈曲させてバーベルを上げていきます。
この時に、肩甲骨を寄せる動きを加えると背筋群に負荷が逃げてしまいますので、肩甲骨は寄せないように注意し、上腕の筋力だけで動作を行ってください。また、肩関節も動かさないように注意し、肘をセット中はしっかりと固定する意識を忘れないようにしましょう。
肘を屈曲させる角度ですが、完全に曲げきってしまうと前腕骨が床に対して垂直になり、筋力ではなく骨でウエイトを支えることになります。こうなると、セット中に上腕二頭筋に対する負荷が抜けてしまうことになりますので、完全に曲げきるやや手前で動作を折り返すことがポイントです。
また、バーベルカールは下ろす時に筋肉にかかる負荷も非常に大切です。このように、ウエイト負荷に耐えながら筋肉が伸展される状態をエキセントリック収縮(伸張性収縮)といい、特に筋肥大にとってはなくてはならない刺激ですので、バーベルを下ろす時は、完全に筋力でコントロールして、ゆっくりと効かせながら下ろすようにしてください。
なお、肘を伸ばす角度ですが、完全に伸ばしきってしまうとセット中に筋肉に対する負荷が抜けることになり非効率です。完全に肘が伸展するやや手前で動作を折り返すようにしましょう。
【本種目のやり方とフォームのポイント】
①背すじを真っ直ぐにし、腕を伸ばした位置でシャフトをグリップして構える
②肘を身体の横にしっかりと固定し、上半身を反らせずに膝から先だけを曲げてバーベルを引き上げる
③バーベルを上げたら、ゆっくりと筋肉に負荷をかけながら元に戻る
■バーベルカールの動作注意点とポイント
バーベルカールを高頻度で行っていると起こりやすいのが「手首の痛み」です。これは、ほとんどのケースでストレートシャフトの握りしめすぎが原因で、特に薬指と小指を強くグリップする癖のある方に多く見られます。
基本的に、ストレートシャフトと肘の屈伸動作はあまり相性がよくありませんが、それは、本来は三次元曲線動作である腕の屈伸に対して、直線で固定されたバーベルシャフトが追従せず、手首に対して捻れ負荷がかかることに起因しています。
ですので、捻れ負荷を手の中で逃がす意味でも薬指と小指は強くグリッピングせずフレキシブルに使い、親指・人差し指・中指の三本の指でシャフトをグリップすることをおすすめします。
なお、WバーやEZバーがある環境でトレーニングを行う方は、迷わずそちらを使うようにしてください。
●リストラップの使用がおすすめ
カール系種目は、たとえEZバーを使ったとしても、どうしても手首に強い負担がかかってしまいますので、リストラップはぜひとも使用したいアイテムです。そして、入手するのであれば、普及品とは違い屈強なサポート力のあるリストラップを強くおすすめします。
●最後まで追い込みたければリストストラップ
また、バーベルカールを最後まで追い込めないケースの一つに、「先に握力がなくなってしまう」というものがあります。筋トレは101%追い込んではじめて成果が出ます。リストストラップを使用して、上腕二頭筋を限界まで追い込みましょう。
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■バーベルカールの目的別の重量負荷設定
筋トレで鍛える骨格筋を構成している筋繊維には以下の三種類があり、それぞれの特徴は次の通りです。
①速筋繊維TYPE2b
約10秒前後の短い時間に爆発的・瞬発的な収縮をする特徴があり、トレーニングにより強く筋肥大します。10回前後の反復回数で限界がくる重量設定で鍛えます。
②速筋繊維TYPE2a
10~60秒ほどのやや長時間で瞬発的な収縮をする特徴があり、トレーニングによりやや筋肥大します。15回前後の反復回数で限界がくる重量設定で鍛えます。
③遅筋繊維TYPE1
60秒以上数分・数時間の持続的・持久的な収縮をする特徴があり、トレーニングにより筋肥大せずに筋密度が上がります。20回以上の反復回数で限界がくる重量設定で鍛えます。
つまり、筋肥大バルクアップ目的なら①、細マッチョ筋トレや女性の部分ボリュームアップ目的なら②、減量引き締めダイエット目的なら③、の負荷回数設定で筋トレを行っていきます。ただし、腹筋郡・前腕筋郡・下腿三頭筋など日常での使用頻度が高い部位は、基本的に20回以上高反復回数で鍛えます。
バーベルカールは小さな筋肉である上腕二頭筋をメインターゲットにした筋トレ種目です。このため、あまりに高重量低回数のトレーニングには不向きです。バルクアップ目的の場合でも、6~8レップの高負荷トレーニングは避け、10~12回の反復で行います。
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■バーベルカールの種類やバリエーション
●バーベルプリチャーカル
反動を使いにくくし、よりストリクトに上腕二頭筋を追い込めるバーベルカールのバリエーションが、カール台を使ったプリチャーカルです。
まず、カール台に肘を乗せ、バーベルを上の位置で構えます。そして、肘が動かないようにしっかりと固定してバーベルを下ろしていきますが、この時にゆっくりとコントロールした動作でエキセントリック収縮による負荷を与えてください。
次に、肘が完全に伸展する少し手前までバーベルを下ろしたら折り返し、バーベルを上げていきます。完全に上げきると前腕骨が床に対して垂直になり、負荷が筋肉から抜けてしまいますので、その直前でまたバーベルを下ろしていきます。
カール台を使えば、反動が完全になくなるかと言えばそんなことはなく、上半身を後ろに倒すことで反動が使えてしまいます。これを防ぐために大切なポイントが「足を肘より前に出さない」ことで、後ろに足を置くことで重心が前傾になり、身体を後ろに倒しにくくなります。
●アームブラスターカール
カール台のないジムや、自宅でバーベルカールを行う場合に、プリチャーカールに近い感覚で、反動を抑えてストリクトに上腕二頭筋を追い込める方法が「アームブラスター」や「アームプレート」と呼ばれるカール専用補助器具を使用したバリエーションです。
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●バーベルドラッグカール
基本的なバーベルカールは肩関節を固定して、肘から先だけを動かす=単一の関節と筋肉だけを動かす単関節運動(アイソレーション種目)です。
それに対し、この動画のようなドラッグカールは、肩関節を動かし肘を後ろに引く動作を加えた複合関節運動(コンパウンド種目)です。
その最大のメリットは「より重い重量負荷を上腕二頭筋にかけられる」ことで、このほかにも、前腕骨が床に対して垂直になるのを防ぎ、より厳しく上腕二頭筋を収縮させることができるというメリットがあります。
なお、本種目はどちらかと言えば上腕二頭筋短頭に対して負荷のかかる割合が多くなります。
【本種目のやり方とフォームのポイント】
①背すじを真っ直ぐにし、腕を伸ばした位置でシャフトをグリップして構える
②肘を後ろに引きながら曲げて、バーベルを上げていく
③できるだけ肘を曲げてバーベルを高く上げ、上腕二頭筋を完全に収縮させる
④おなじ軌道で、ゆっくりと筋肉に負荷をかけながら元に戻る
●EZバーハンマーカール
カール系種目では、グリップを縦にする(ハンマーグリップ)と上腕二頭筋長頭に対する負荷の割合が増加します。もちろん、ストレートバーを縦に握るのは不可能ですので、動画のような角度のついたEZバーと呼ばれるバーベルを使います。
動作ポイントは通常のバーベルカールに準じてください。
なお、完全にグリップを縦にしたハンマーカールを行いたい場合には、こちらの動画のようなトライセプスバーを用いて行います。
●バーベルリバースカール
バーベルを逆手で握って行う、バーベルリバースカールは上腕二頭筋長頭・上腕筋および前腕伸筋群で最大の腕橈骨筋に対して高い効果があります。
動作ポイントは通常のバーベルカールと同じですが、より握力が要求される種目ですので、最後まで追い込めない方はリストストラップの使用をおすすめします。
【本種目のやり方とフォームのポイント】
①背すじを真っ直ぐにし、腕を伸ばした位置でシャフトを逆手でグリップして構える
②肘を身体の横にしっかりと固定し、上半身を反らせずに膝から先だけを曲げてバーベルを引き上げ、手首を反らせて前腕筋群を完全に収縮させる
③バーベルを上げたら、ゆっくりと筋肉に負荷をかけながら元に戻る
●リバースインクラインバーベルカール
リバースインクラインバーベルカールは、インクラインベンチにうつ伏せになって行うことから「リーバース」の名称がついていますが、バーベルのグリップはリバースグリップではなくノーマルグリップです。
最大のメリットは前腕骨を床に対して垂直にすることができないので、肘を完全に曲げて上腕二頭筋を完全収縮させたポジションでも負荷がかかり続けることです。
なお、肘を伸ばした時に完全に伸ばしきることをせず、負荷を逃さないようにしてください。
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■バーベルトレーニングの基礎知識
●バーベルトレーニングの長所と短所
バーベルトレーニングは全てのウエイトトレーニングの基本となる筋トレ方法で、全身を高負荷で鍛えられ、なおかつ動作軌道のブレやズレを自身で支える必要があるため、体幹インナーマッスルも強くなるというメリットがあります。
このため、中級者~上級者には必須のトレーニング方法と言えます。反面、マシントレーニングのように軌道が決まっていないため、フォームや動作を習得するのには正確な指導を受け、慣れと経験が必要になります。
バルクアップ筋肥大・減量ダイエットいずれの目的の場合でも、いずれは習得したいトレーニング方法と言えます。
なお、他のバーベルトレーニングメニューについては、下記の種目別解説記事をご参照ください。
■バーベルトレーニング全種目一覧
筋トレの食事メニュー例
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執筆者情報
上岡岳
アームレスリング元日本代表
ジムトレーナー・生物学学芸員
JAWA日本アームレスリング連盟常任理事|レフリー委員長・広報広報部長
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